カーボンテック領域のスタートアップ支援を行う米アクセラレータ「カーボン・トゥ・バリュー・イニシアティブ(Carbon to Value Initiative、以下C2V)」が、第5期コホート10社による最終ショーケースを2026年6月3日にニューヨーク市で開催する。
C2Vは、グリーンタウン・ラボ、ニューヨーク大学タンドン工学部のアーバン・フューチャー・ラボ(Urban Future Lab)、フラウンホーファーUSA(Fraunhofer USA)の3組織が共同運営する6カ月間のプログラムである。発足以来5年間で35社を支援し、累計フォローオン調達額は6億ドル(約940億円)超を計上したと運営側は説明する。
第5期は33カ国から165件の応募を集め、応募数としては過去最多であった。
選出された10社の技術領域は、DAC、地下鉱物化貯留、CO2由来化学品合成、廃棄物転換型素材製造など多岐にわたる。
残る4社はイコドスと同様のCCU系(ターンオーバー・ラボ、ラシュヌ)、廃棄物転換系(ユニバーサル・マター、ライトワン)に分類される。地理的内訳は米国5社、カナダ2社、英・独・ケニア各1社で、アジア勢の参加はゼロである。
第5期コホートが活動した2025年から2026年にかけての時期は、米連邦のクリーンエネルギー支援が大幅後退した期間と重なる。トランプ政権は2025年5月に37億ドル(約5,810億円)のカーボン回収・産業脱炭素関連助成を取り消し、同年10月に追加223件の助成を打ち切り、11月にはクリーンエネルギー実証局(OCED)を廃止した。明確な後継組織は存在しない。2026年4月にDACハブと水素ハブの一部は見直しを経て継続が決定されたが、不確実性は依然として高い。
このような連邦レベルの政策逆風にもかかわらず、C2Vのような民間・非営利主導の支援エコシステムは粛々と5年目を迎えた点が、本件の構造的特徴である。コーポレート・リーダーシップ・カウンシル(CLC)にはシェル(Shell)、トタルエナジーズ(TotalEnergies)、キャタピラー(Caterpillar)、ジョンソン・マッセイ(Johnson Matthey)、エボニック(Evonik)、ロレアル(L’Oréal)、ヴェオリア(Veolia)、エネルギー・インパクト・パートナーズ(Energy Impact Partners)、XPRIZEなど計13組織が名を連ねる。
一方で、こうした民間ベースのエコシステムが連邦政策の不在をどこまで代替できるかについては慎重な見方もある。CDR系スタートアップの大規模実証には政策的需要創出が不可欠であり、企業オフテイクと非営利アクセラレータの組み合わせだけで補完できる範囲は限定的だとの指摘がある。
10社の所在地、CLC構成企業のいずれにも日系の名前は見当たらない。33カ国からの応募者にも日本拠点のカーボンテック・スタートアップの存在は確認されていない。この不在は、日本のカーボンテック・エコシステムに関する従来の課題認識と整合する。
C2V第5期は業界転換点ではなく、米連邦の政策後退下でも民間ベースのアクセラレータが粛々と5年目を迎えたという現状継続の報告である。注目すべきは中身よりも構図。CDR・CCU・廃棄物転換が混在するカーボンテック・パイプラインの育成プロセスに、日本のスタートアップも事業会社も実質的に参画していない点だ。
GX-ETSへの除去系カーボンクレジット組み込みを将来見据えるならば、日本企業はCLC型のコーポレート参画スキームを通じた早期の技術ソーシングとパイロット展開に踏み出すべきと言える。