米国の主要なカーボンクレジット管理団体であるベラ(Verra)は2025年12月18日、ワシントンにて、国際民間航空機関(ICAO)が定める国際航空のための炭素相殺・削減スキーム(CORSIA)の厳格な要件を満たすために設計された、3つの保険商品を初めて承認したと発表した。
この措置により、プロジェクト開発者はホスト国政府による政策変更や二重計上のリスクを金融商品でヘッジすることが可能となり、航空業界が求める「CORSIA適格クレジット」の供給が大幅に加速する見通しだ。
今回承認されたのは、CFCアンダーライティング・リミテッド(CFC Underwriting Limited)、オカ・ザ・カーボン・インシュアランス・カンパニー(Oka, The Carbon Insurance Company)、およびアルティオ・カーボン・リミテッド(Artio Carbon Limited)が提供する保険商品である。これらの商品は、国際的な保険仲介企業であるハウデン(Howden)による独立した評価を受け、ベラの基準への適合が確認された。
CORSIAの第一フェーズ(2024–2026年)において、航空会社がオフセットに使用できるクレジット(2021年以降発行分)は、排出削減分がホスト国と航空会社の両方でカウントされる「二重計上(Double Claiming)」を回避する必要がある。通常、これはホスト国政府がパリ協定第6条に基づき、自国の削減目標から当該クレジット分を除外する「相当調整(Corresponding Adjustment)」を行うことで保証される。
しかし、多くの途上国では行政手続きの遅延や政権交代による方針転換のリスクが存在する。今回承認された保険商品は、ホスト国が約束した相当調整を履行しなかった場合や、承認を取り消した場合に補償を提供する仕組みであり、これにより「政府保証」の代替として機能する。
この承認は、市場に即効性のあるインパクトを与えると見られる。特に、デラグア(DelAgua)などが手掛けるクックストーブ(高効率調理器具)プロジェクトなど、これまで「政府による相当調整の確約」が得られるまで発行が滞っていた数十万トン規模のクレジットが、保険という裏付けを得てCORSIA適格ラベル(CORSIA label)付きで市場に供給される道が開かれたことになる。
オカ(Oka)の提供する「相当調整プロテクト(Corresponding Adjustment Protect™)」などは、まさにこの規制リスクをアンダーライティング(引受)するものであり、クレジットの環境十全性(Integrity)を財務的に担保する。
ベラは今週、プロジェクト開発者が署名すべき「CORSIA会計表明証書(CORSIA Accounting Deed of Representation)」の更新版も併せて公開した。現在は単独のプロジェクト事業者向けのみだが、複数の事業者が関与するプロジェクト向けの証書も数日中に公開される予定である。
航空業界の脱炭素化需要が急増する中、ヴェラによるこの「保険ルート」の確立は、行政手続きのボトルネックを解消し、民間資金の還流を促す重要なマイルストーンとなる。
本ニュースは、カーボンクレジット市場が「環境活動」から「金融市場」へと成熟する過程における重要な転換点です。これまでCORSIA適格クレジットの供給不足における最大の懸念は、グローバルサウスの政府が発行する「相当調整(CA)の確約」が、政変などで反故にされるカントリーリスクでした。
日本の商社や航空会社にとっても、このリスクを自社で負うことは困難でしたが、今回のヴェラの決定により、リスクを専門の保険会社へ移転(転嫁)するスキームが正式に認められたことになります。これにより、以下の変化が予測されます。
これは単なる事務手続きの変更ではなく、炭素市場における「リスクヘッジ手段の確立」を意味します。
参考:https://verra.org/verra-marks-key-corsia-milestone-with-release-of-approved-insurance-products/