テキサス州拠点のVerified Carbon(ベリファイドカーボン)は2026年5月、地質学的炭素貯留プロジェクトをAAA〜Dで格付けするAI駆動プラットフォーム「CarbonIQ」について、米国仮特許を申請したと発表した。特許名は「CarbonIQ: A System and Method for Quantitative Verification and Rating of Subsurface Geosystem Performance for Listing on Market Exchanges」で、プラットフォームの方法論とアーキテクチャを規定する59のクレームを含む。
CarbonIQは、アンサンブル貯留層モデリング、統計的スコアリング、エージェント型AI、暗号学的監査証跡を組み合わせ、従来は数ヶ月から数年を要した検証プロセスを数時間まで短縮することを目指す。スコアと方法論バージョンはオンチェーン台帳にコミットされ、第三者による独立監査が可能となる設計である。
格付けは金融市場における社債格付けと同様の枠組みを採用し、地中貯留プロジェクトに対して信頼性と封じ込めリスクを反映した記号評価を付与する。Verified Carbonは、銀行によるプロジェクトファイナンスの組成、保険会社による封じ込めリスクのポートフォリオ評価、カーボン連動デリバティブ市場の形成を主要な活用先として想定している。米国の45Q税額控除やEPAのClass VI井戸許認可といった規制対応への適用も視野に入れる。
UTオースティン経済地質局のティップ・メッケル(Tip Meckel)研究教授は、地下貯留検証が歴史的に「非一意問題(non-unique problem)」であった点を指摘し、CarbonIQが定量的かつ再現可能な評価枠組みを提供する意義を強調した。
カーボンクレジット格付けの領域では、BeZero Carbon(ビーゼロカーボン)、Sylvera(シルベラ)、Renoster(レノスター)といった事業者が先行しており、いずれもボランタリーカーボンクレジット市場全般を対象とした独自評価を提供している。CarbonIQが差別化要素として打ち出すのは、地質学的炭素貯留に特化した点と、検証プロセス自体を自動化する点である。
先行事業者の多くが発行済みカーボンクレジットの事後評価を主軸とするのに対し、CarbonIQは貯留プロジェクトの技術的信頼性そのものを評価対象とし、プロジェクトファイナンス段階からの活用を想定している。この点で、既存の格付け事業者の延長線上にあると同時に、評価対象とタイミングの両面で新たな市場領域を切り開く試みとも位置づけられる。
ただし、単一の民間企業がAAA〜Dという金融市場型の記号格付けを発行する構造には議論の余地もある。社債格付け市場では信用格付け会社の寡占構造が利益相反問題を生んできた経緯があり、カーボン市場で同様の構造が再現されることへの懸念は残る。ICVCMやISO等の公的枠組みとの整合性、複数事業者間での格付け比較可能性の確保が、今後の市場受容を左右する論点となる。
CarbonIQの試みは、BeZeroやSylveraといった先行格付け事業者と直接競合する一方、地中貯留特化という新たな市場領域を切り開く戦略的ポジショニングである。除去系カーボンクレジット全般を扱う先行勢に対し、CCSと除去系CDR(DACCS、BECCS)の貯留段階に共通する地質学的評価という技術的ニッチに集中することで、専門性で差別化を図る構造といえる。もっとも、CCSと除去系CDRを同一格付け体系で扱うことが、両者の性質の違いを曖昧化させる可能性は残る。
さらに本質的な論点は、民間単独でAAA〜Dという記号格付けを発行する正統性そのものにあり、ICVCMやISOなど公的枠組みとの接続をどう設計するかが、CarbonIQが市場標準となるか単発の試みに終わるかを分ける構造的要因となる。