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Caravel Bio、CCS用酵素の安定性を12倍に向上 炭酸水素カリウム法の商業化評価が前進

2026.05.14 読了 約4分
Caravel Bio、CCS用酵素の安定性を12倍に向上 炭酸水素カリウム法の商業化評価が前進
出典:イメージ

米バイオスタートアップのカラベル・バイオ(Caravel Bio)は2026年5月12日、独自のタンパク質工学プラットフォームにより、産業条件下における生体触媒(酵素)の安定性を6か月で12倍に高めたと発表した。

同社は2025年7月からシェル(Shell)のGameChangerプログラムに参加しており、炭酸水素カリウムを溶媒に用いる低コスト型CCS技術の商業適用性を評価する資金提供を受けている。今回の安定性向上は、その評価における主要な技術マイルストーンと位置付けられる。

カラベル・バイオは2025年10月に正式発足したスタートアップであり、米国立科学財団(NSF)から780万ドル(約12億3,000万円)の助成金を獲得済みである。創業者・CEOはトレバー・ニックス(Trevor Nicks)博士で、本社はオレゴン州ポートランドに置く。

アミン法のエネルギー課題

現行の商業CCSの多くはアミン系溶媒によるCO2吸収を中核とする。アミンはCO2を化学的に結合させて回収する一方、結合したCO2を分離・再生する工程に大量の熱エネルギーを要する。

このエネルギーコストはCCSのオペレーションコスト構造において支配的な比重を占める。CCSが過去数十年にわたり大規模商業展開で苦戦してきた根因の一つとして繰り返し指摘されてきた要素である。

代替溶媒として炭酸水素カリウムが有望視されてきた経緯は古い。ただし、効率的なCO2捕集には極めて堅牢な酵素を組み合わせる必要があり、酵素生産コストが商業展開の障壁となってきた。これがカラベル・バイオが解こうとしている課題である。

タンパク質工学による酵素堅牢化

同社が採用するのは、セル・フリーのタンパク合成と細菌胞子ディスプレイを組み合わせたプラットフォームである。酵素タンパク質を超安定な細菌胞子の表面に提示することで、酵素を産業環境の苛酷な条件から保護し、機能を維持させる設計となっている。

並行して、機械学習を用いた指向性進化により、数百万種類のタンパク質バリアントを並列でテストし、最適な変異体を高速に探索する仕組みも組み込んでいる。これにより、従来のラボでの逐次的試行に比べ、開発サイクルを大幅に短縮できると同社は主張する。

ニックス氏は「他社は酵素に泳ぎ方を教えようとしてきたが、我々は酵素のために船を造り、操船を訓練している」と述べている。アプローチの新規性は、酵素単体の改良ではなく、酵素を支持する分子的足場の設計に置かれている。

米国の政策的後押し

技術側の進展と並行して、米国ではCCS関連の税制優遇が拡張されている。2025年7月、連邦政府はインフレ抑制法(IRA)で導入した炭素回収向け税額控除「45Q」を1トンあたり85ドル(約1万3,400円)で維持した。

加えて、CO2の石油増進回収(EOR)や製品変換利用への適用税額も同率の85ドル(従来60ドル)へ引き上げた。これによりCCSの投資判断における収益面の前提は改善するが、カラベル・バイオ自身は「広範な展開の前提条件は技術が大幅に安価になることだ」と位置付けている。税制インセンティブと技術コスト改善の双方が同時に進む必要性を、同社自身が明確化している点が読み取れる。

商業化への距離

シェルGameChangerは原則として初期段階技術の商業適用性を評価する枠組みであり、参加自体が大規模商業化を保証するものではない。NSF助成金780万ドルも、CCS用途を含むDNA合成、動物保健、非汚染化学品製造等の幅広い基礎研究を対象としており、CCS単独の資金ではない。

12倍の酵素安定性向上は重要な進展ではある。ただし、安定性の絶対値、対応可能なCO2濃度範囲、再生サイクル数、実プラント条件下での挙動など、商業化判断に必要な指標群は公開情報からは確認できない。

一方で、現行アミン法も継続的に最適化が進んでおり、物理吸収・固体吸収材・膜分離など競合的なCCS技術が複数並走している点も冷静に踏まえる必要がある。酵素・炭酸水素カリウム法が支配的な解となるか否かは、現時点では決着していない。

本件は、CCSコスト構造の根本課題に対する複数のアプローチの一つと位置付けるのが妥当である。

酵素・炭酸水素カリウム法は学術的には長く知られた選択肢であり、12倍の安定性向上が商業実装の臨界点を越えたか否かは、追加のパイロット実証と独立した第三者検証を待つ必要がある。

参考:https://www.prnewswire.com/news-releases/caravel-bio-accelerates-costefficient-carbon-capture-with-novel-protein-engineering-302769105.html

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カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。