英テサイド(Teesside)拠点のO&M(運営・保守)専業企業、ピーエックス・グループ(px Group)は2026年3月27日、英国初の商業規模炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトの中核を担う2施設の運営・保守契約を受注したと発表した。
契約相手方はNZTパワー(NZT Power)およびノーザン・エンデュランス・パートナーシップ(Northern Endurance Partnership、以下NEP)であり、初期5年間の協定のもと、現地で約100人の雇用が創出される。
ピーエックス・グループが運営・保守を受託するのは以下の2施設である。
NZTパワーの炭素回収プラントは、世界初となるCCS付き天然ガス火力発電所に設置された設備であり、発電プロセスで生じるCO2を回収する役割を担う。NEPのオンショアCO2圧縮施設は、回収されたCO2を北海沖の地下貯留層へ輸送するための加圧・圧縮処理を行うインフラである。両施設は英国のネットゼロ産業基盤の「運用上の中核」を形成しており、東部沿岸クラスター(East Coast Cluster)全体の機能的な要となっている。
なお、東部沿岸クラスターはすでに英国企業向けサプライチェーン契約として15億ポンド(約3,165億円)を発注済みであり、地域産業の広範な動員が進んでいる。
ピーエックス・グループは両施設のコミッショニング段階から定常運転への移行を主導し、以下を担う。
安全・環境許認可条件の遵守、施設固有の運転手順書(Operating Procedures)の策定、ハンドオーバー段階における性能受領(Performance Acceptance)管理、定常運転移行後の継続的エンジニアリング・保守プログラムの遂行。
ピーエックス・グループのCEOであるジェフ・ホームズ(Geoff Holmes)氏は、「このプロジェクトでは安全運転は絶対条件であり、妥協の余地はない。地域から約100人を採用し、その訓練・育成に投資して、雇用ではなく『キャリア』を創出する」と述べた。
雇用創出においてはアプレンティス(apprentice)枠を積極的に設け、科学・技術系人材育成の専門機関であるコジェント・スキルズ(Cogent Skills)と連携した構造化訓練プログラムを実施する。ピーエックス・グループはティーズサイドで25年超の操業実績を有しており、同地域のネットゼロ基盤を支える中核的雇用主として位置づけられることになる。
契約は地域サプライヤーへの発注も通じた間接的な経済波及効果が見込まれており、地域産業コミュニティへの長期的貢献が期待される。
ティーズサイドは英国の脱炭素化戦略において、電化による排出削減が困難な「ハードトゥアベイト(Hard-to-Abate)」産業が集中する地域として重要な位置を占める。NZTパワーとNEPが推進するプロジェクトは、CO2の大規模回収・貯留に必要なインフラを確立することを目指しており、将来の炭素回収・貯留(CCS)市場形成に向けた実証的な基盤ともなりうる。
NEPのマネージング・ディレクターであるリッチ・デニー(Rich Denny)氏は「オンショア圧縮施設の安全な運営・保守は、英国初の商業規模CO2輸送・貯留システムを実現するうえで不可欠だ。ピーエックス・グループはその運用専門性、安全文化、地域への関与において適切な能力を示した」と評価した。
ティーズサイドにおけるO&M契約の始動は、CCSプロジェクトが「建設・開発フェーズ」から「運営フェーズ」へと移行する際に、専門O&M事業者が独立したビジネス領域として台頭しつつあることを示している。日本では苫小牧CCSや商業規模CCUS実証計画が進捗中であり、同様の運営専門事業者の育成・確保が今後の課題となる。英国モデルにおける地域雇用・スキル開発との統合アプローチは、日本のCCS展開に際しても参照に値する事例である。