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ノボカーボ、ドイツ・デッサウで15年間の地域熱供給契約を締結 バイオ炭由来CDRと再エネ熱を統合する新拠点へ

2026.04.25 読了 約7分
ノボカーボ、ドイツ・デッサウで15年間の地域熱供給契約を締結 バイオ炭由来CDRと再エネ熱を統合する新拠点へ
出典:Novocarbo

ドイツのクライメートテック企業ノボカーボ(Novocarbo)と親会社のヘヴェラ・カーボン(Hevella Carbon)は2026年4月、ザクセン=アンハルト州デッサウ=ロスラウ市の自治体公益事業者シュタットヴェルケ・デッサウ(Stadtwerke Dessau)と、長期にわたる熱供給契約を締結したと発表した。

同契約に基づき、ノボカーボはデッサウ=ロスラウ市内に新たな「カーボン・リムーバル・パーク・デッサウ(Carbon Removal Park Dessau)」を建設し、バイオ炭製造プロセスから生じる再生可能熱を地域熱供給網へ供給する。

調印式には、デッサウ=ロスラウ市長のロベルト・レック(Robert Reck)氏、シュタットヴェルケ・デッサウ最高経営責任者(CEO)のディノ・ヘル(Dino Höll)氏、ノボカーボ業務執行取締役のカール・ラインハルト・コルムゼー(Karl Reinhard Kolmsee)氏が出席し、自治体の地域熱供給脱炭素化に向けた重要な節目として位置づけられている。

年間13.5GWh・15年間の長期熱オフテイク

契約の中核は、ノボカーボが新拠点から年間最大13.5ギガワット時(GWh)の再生可能熱をデッサウ=ロスラウ市内の地域熱供給網に対して運転開始から15年間にわたり供給する点にある。運転開始は遅くとも2028年1月1日を予定しており、熱の引き取りはデッサウの地域熱供給事業者であるフェルンヴェルメフェアゾルグング・デッサウ(Fernwärmeversorgung GmbH Dessau)が担う。

長期のオフテイク契約は、ノボカーボにとってプロジェクトのバンカビリティ(融資適格性)を大幅に高める設計である。同時に、自治体側にとっても化石燃料依存を段階的に低減できる安定的な再生可能熱源を15年スパンで確保できることになり、地域熱供給の脱炭素化において戦略的意義を持つ。

なお、英文の二次情報源(Carbon Herald)では引取主体を「Fernwärmebedarf GmbH Dessau」と表記しているが、ドイツ語の一次情報源であるノボカーボ公式リリースに従い、本記事では正式名称の「Fernwärmeversorgung GmbH Dessau(フェルンヴェルメフェアゾルグング・デッサウ)」と記載した。

熱分解で炭素を恒久固定し、熱を同時供給する循環型インフラ

カーボン・リムーバル・パーク・デッサウの中核技術は、バイオ炭炭素除去(Biochar Carbon Removal、BCR)である。木材チップや果実核といった生物起源残渣を、酸素を遮断した条件下で摂氏600〜700度の熱分解(pyrolysis)にかけることで、安定した固体炭素であるバイオ炭と、副産物としての高温排熱を同時に取り出す仕組みだ。

バイオ炭は、植物が大気から吸収したCO2を固体炭素として恒久的に固定する形態であり、土壌改良材や建材添加物などに用いることで長期間にわたり炭素を地中・建材中に貯留することが可能となる。これはIPCCも認定する炭素除去(CDR)の代表的手法のひとつであり、永続性(permanence)の観点で数百年〜数千年規模の貯留が期待される「耐久性の高い」CDR手法に位置づけられる。

熱分解工程で発生する排熱は地域熱供給網に供給され、化石燃料由来の熱を代替する。原料となる生物起源残渣もこれまで廃棄されてきたものを循環利用するため、排熱の有効活用、生物起源廃材の再利用、炭素の長期貯留という三重の循環性が成立する設計である。

コルムゼー業務執行取締役は「デッサウ=ロスラウは、地域パートナーシップが脱炭素化をいかに推進できるかを示す好例だ。バイオマスの地域内処理とエネルギー供給を通じて地域経済の強化にもつなげていきたい」と述べた。

農業から建設、2035年連邦庭園博への応用も視野

ノボカーボが製造するバイオ炭は、農業、都市緑化、建設など複数領域での活用が想定されている。農業・都市緑化分野では、土壌構造の改善、保水・養分保持能力の向上、生物多様性の保全に寄与し、コベネフィット(co-benefit)の創出につながる。建設分野ではアスファルトなどの混和材として用いることで化石由来素材の一部代替や材料特性の改善に貢献する用途が探索されている。

特筆すべきは、デッサウ=ロスラウで開催予定の2035年連邦庭園博覧会(Bundesgartenschau 2035)との接続である。バイオ炭を組み込んだ培土を活用することで、気候変動に強靱な緑地・土壌の整備と都市部におけるCO2貯留を同時に実現する展示が構想されており、CDRの社会実装を可視化するショーケースとなる可能性がある。

ノボカーボはすでに、バイオ炭混和アスファルトのパイロット案件において初のCDRクレジットを発行した実績を有しており、デッサウ拠点でも同様の方法論によるCDRクレジットの創出と販売が事業モデルの重要な柱となる見通しだ。

シュタットヴェルケ・デッサウの熱供給転換戦略

シュタットヴェルケ・デッサウは、デッサウ=ロスラウ市の自治体エネルギー事業者として、電力、地域熱供給、水道、通信、モビリティを総合的に担っている。同社は地域熱供給転換計画(Fernwärme-Transformationsplan)に基づき、2030年までに熱供給システム全体に最低30%の再生可能エネルギーまたは不可避な廃熱を統合することを目標として掲げている。

今回の契約と並行して、同社は革新的コージェネレーション(iKWK)方式によるツォーバーベルク(Zoberberg)拠点(年間約5.2GWhの熱供給)や、ヴァゴンバウ(Wagonbau)・コッホシュテット(Kochstedt)両拠点(合計約5.7GWh/年)の整備も予定しており、複線的な再生可能熱源の積み上げを進めている。

ヘルCEOは「バイオ炭製造に伴う不可避な排熱の利用は、具体的な気候保護への貢献である。化石燃料を段階的に革新的な熱源で置き換え、地域熱供給を気候中立に向けて持続的に発展させていきたい」とコメントした。

本件は、「永続性の高いCDRクレジット創出」と「地域熱供給の脱炭素化」を一体の事業モデルとして組み立てた点で、日本のカーボンクレジット市場関係者にとって示唆に富む。日本では地域熱供給そのものの普及度合いが欧州ほど高くない一方、産業用熱需要・コージェネレーション分野でのバイオマス活用や廃熱回収は重要テーマであり、本案件の「バイオ炭+熱」カップリングモデルは、ハード・トゥ・アベイト産業向けの熱供給とCDRの組み合わせという観点で参照価値が高い。

加えて、日本国内ではJ-クレジット制度においてバイオ炭の農地施用に関する方法論がすでに整備されており、バイオ炭由来カーボンクレジットの組成は実務的にも具体化が進みつつある。

欧州の除去系カーボンクレジット市場で評価を高めるバイオ炭プロジェクトの設計思想、とりわけ長期オフテイク契約によるバンカビリティ確保、地域インフラとの統合、複数収益源(熱販売+バイオ炭販売+CDRクレジット販売)の組み合わせは、日本企業がバイオ炭プロジェクトを開発・調達する際の参考モデルとなる。

特に大手商社・エネルギー事業者・素材メーカーが国内外でバイオ炭関連投資を進めている現状を踏まえると、本件のように自治体公益事業者と連携した「熱・素材・カーボンクレジット」のトリプル収益モデルは、日本市場での横展開可能性を含めて注視すべき動向である。

参考:https://www.novocarbo.com/de/news/novocarbo-und-stadtwerke-dessau-unterzeichnen-langfristigen-waermeliefervertrag/

関連タグ CDR バイオ炭
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。