ガーナ環境保護庁(Ghana Environmental Protection Agency、EPA)が2026年3月に公開した最新スコアカードによると、ガーナは2030年までに国際移転が可能なパリ協定6条のカーボンクレジット総枠のうち、すでに約47.1%にあたる1,130万トンの国際移転対応クレジット(ITMO)承認を完了した。
ITMOの承認はEPA内の炭素市場局(Carbon Market Office、CMO)が発行する「承認状(Letter of Authorization、LoA)」を通じて行われる。承認済み1,130万トンは、ガーナが2030年に向けて設定した国際移転向け総枠のほぼ半分に達しており、アフリカの新興カーボンクレジット市場の中でも際立った執行スピードを示している。
承認されたITMOは対応調整(Corresponding Adjustment)の義務を伴う。すなわち、ガーナは当該排出削減量を自国の将来の排出量計算から控除することにコミットしており、購入国との間でのダブルカウントを構造的に防止する仕組みが担保されている。
ガーナが締結しているパリ協定6条に基づく二国間協力協定の相手国は現在5カ国で、スイス、スウェーデン、シンガポール、韓国、リヒテンシュタインとの間で協定が稼働中だ。特にスイスとの取引は試験的な段階からの知見が蓄積されており、ガーナ側のLoA発行体制の整備にも寄与している。
今回の迅速な承認ペースを支えているのが、2025年環境保護法(Environmental Protection Act, 2025)(法律番号:Act 1124)の施行だ。同法はカーボンクレジット市場に関する国内規制の枠組みを正式に法制化し、以下の二つの重要インフラを整備した。
この二層構造は、国際移転の透明性確保とホスト国への利益還流を両立させる設計として注目に値する。
ガーナが設定している2030年の排出削減目標は総計6,400万トンであり、このうちの一部は国際的な炭素金融支援を条件とする「条件付き目標」として位置づけられている。今回の47%承認ペースは、残りの枠がいかに戦略的に配分されるかという点で、今後の二国間交渉の行方とともに注目が集まる。
ガーナの対応は、GX-ETSの本格運用を控える日本にとっても示唆的だ。対応調整義務を法制度の中核に据えた上でITMOを計画的に配分するアプローチは、二国間クレジット制度(JCM)を通じて途上国との炭素市場連携を深める日本企業・政府双方が参照すべきモデルケースとなりうる。特にシンガポールが同国との協定国に含まれている点は、東南アジアを介した間接的な連携可能性を探る上でも注視したい。