カーボンギャップ(Carbon Gap)とスウェコ(Sweco)は2026年5月、ポーランドの炭素除去(CDR)に関する評価(CRRA)を公表した。高ポテンシャルシナリオでは、技術・管理由来のCDRが2050年に年間約4,500万トン、森林などの自然吸収源を加えると約8,500万トンに達し、想定される残余排出(年間3,000万〜5,000万トン)を上回りうるとする。
一方、現行政策の延長にとどまる低ポテンシャルシナリオでは、2050年のCDRは年間約1,600万トンにとどまり、自然吸収源なしでは残余排出に届かない。
ポテンシャルの80%超は森林、泥炭地、農地といった自然生態系に依存する。報告書は、即時に展開しうる経路として植林、泥炭地の再湿地化、農地・牧草地管理、BECCS、バイオ炭を挙げる。
ポーランドはEUの2050年気候中立目標を国内法に取り込んでおらず、独自の気候法もCDR目標も国家戦略も持たない。2025年7月に示されたエネルギー・気候国家計画(NECP)の改訂版はCCUSやBECCSに言及するものの、DACCSなどの技術的除去は遠い将来の選択肢として扱われ、即時展開の具体策を欠く。
報告書は、この戦略不在こそが排出削減と炭素除去の双方を停滞させる最大級のボトルネックだと指摘する。
投資面では、高ポテンシャル経路を2050年に実現するには年間約19億〜90億ユーロ(約3,500億〜1兆6,700億円)規模の資金が必要と試算する。EU ETSへの統合、差金決済契約(CCfD)、公共調達といった信頼できる買取機構がなければ、初期案件を超えた規模拡大は見込みにくいとする。
全シナリオを通じ、最大の制約は地中CO2貯留へのアクセスである。実用的な貯留容量はIEA推計で約20億トン、理論容量はポーランド地質研究所(PIG)推計で約156億トンとされるが、開発はなお初期段階にある。
現状、この容量はCCSに優先配分され、大気からの除去には回されていない。報告書は、両現実シナリオでDACCSが展開されず、限られた貯留がBECCSに振り向けられる構図を示す。
オルレン(ORLEN)はエクイノール(Equinor)と貯留地探索の覚書を結び、2035年までに年間400万トン規模の回収・輸送・貯留能力を掲げる。ホルシム(Holcim)のGo4ECOPlanetやグダンスクのCO2集積ターミナル(ECO2CEE)など、CCUSインフラの萌芽も進む。
報告書は、貯留を本格開発すれば自国目標の達成に加え、貯留余地の乏しい中東欧諸国向けの炭素管理ハブとなりうると位置づける。立地規制の整備遅延が、この潜在力を解放できるかを左右する。
本評価は、カーボンギャップとスウェコが欧州各国を対象に進めるCDR評価シリーズの一国版であり、枠組み自体に新規性は乏しい。
その固有の価値は、ポーランドの資源量と政策の現状を突き合わせ、戦略不在が技術上の高ポテンシャルを座礁させうる構図を国別の数値で示した点にある。年間8,500万トンという上限値そのものより、低ポテンシャル経路では残余排出にすら届かないという落差が、ポーランドのCDRの位置づけを左右する論点となる。