航空業界の国際的な温室効果ガス排出削減制度であるCORSIA(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)の第1フェーズ(2024年〜2026年)における履行期限が近づく中、航空各社は高品質なカーボンクレジットの深刻な供給不足に直面している。
英国の格付け大手であるビーゼロ・カーボン(BeZero Carbon)の最新の分析によると、現在の供給量は需要予測を大幅に下回っており、市場の逼迫が予想されている。
世界の温室効果ガス (GHG)排出量の約2.5%を占める航空セクターは、旅客需要の増加に伴い排出量の拡大が見込まれている。低炭素燃料などの代替手段が大規模な導入に至るまでには数年を要するため、CORSIAのもとで航空各社は、国際路線の排出増加分を適格なカーボンクレジットでオフセットしなければならない。
しかし、ビーゼロ・カーボン(BeZero Carbon)のデータによれば、2028年1月の期限までに航空各社が必要とするカーボンクレジット量は約1億5,000万トンと推定されるのに対し、現在発行されている適格なカーボンクレジットは約3,200万トンに留まっている。
また、CORSIA第1フェーズのカーボンクレジット市場規模は20億ドル(約3,000億円)を超えると予測されており、これは現在のボランタリーカーボンクレジット市場の年間取引額の数倍に相当する。
供給量だけでなく、品質についても懸念が広がっている。ビーゼロ・カーボン(BeZero Carbon)が現在適格とされるカーボンクレジットの81%を評価したところ、そのすべてが「BB」または「B」の格付けであった。これは、主張されている排出削減が実際に達成される可能性が「中程度に低い」から「低い」ことを示唆している。
今後供給される可能性のあるプロジェクトを見渡しても、気候変動への影響が「中程度」以上であることを示す「BBB」以上の格付けを獲得できるのは、全体の約23%に過ぎないと予測されている。特にクックストーブプロジェクトに由来するカーボンクレジットが市場を支配する可能性があるが、これらの品質には大きなばらつきがある。
供給不足の大きな要因となっているのが、ホスト国(プロジェクト実施国)による承認の遅れである。CORSIA適格なカーボンクレジットとして認められるには、その削減分がホスト国の国家目標(NDC)と重複してカウントされないよう、ホスト国からの「承認書(LoA)」が必要となる。これによりダブルカウントが防止される仕組みだが、現在この承認を得ているプロジェクトは世界でわずか10件程度に過ぎない。
ビーゼロ・カーボン(BeZero Carbon)の共同創設者兼チーフ・イノベーション・オフィサーであるセバスチャン・クロス(Sebastien Cross)氏は、「供給が増えなければ、航空各社は2028年までにカーボンクレジットの調達危機に直面する可能性がある。しかし、市場の拡大は誠実さ(インテグリティ)を犠牲にして進められるべきではない」と指摘している。
航空各社は、規制遵守と環境的な信頼性を両立させるため、より透明性の高いプロジェクトを優先し、厳格なリスク評価を調達戦略に組み込むことが求められている。
日本の航空大手もCORSIAの対応を本格化させているが、今回の報告が示す供給不足は、調達コストの急騰を招くリスクを孕んでいる。高品質なカーボンクレジットの確保は、単なるコンプライアンスの問題ではなく、将来的なグリーンウォッシング批判を回避するための経営戦略そのものであると言える。
参考:https://bezerocarbon.com/insights/corsia-carbon-credits-will-airlines-land-on-quality