最新ニュース
海外ニュース

クール・エフェクト、ミティ・ラボの稲作メタン削減カーボンクレジットを取扱開始

2026.05.14 読了 約4分
クール・エフェクト、ミティ・ラボの稲作メタン削減カーボンクレジットを取扱開始
出典:<a href="https://www.businesswire.com/news/home/20260513843496/en/Cool-Effect-Builds-on-Market-Leading-Superpollutant-Portfolio-with-Addition-of-Rice-Methane-Reduction-Project-from-Mitti-Labs" target="_blank">Cool Effect</a>

米サンフランシスコを拠点とする非営利団体クール・エフェクト(Cool Effect)は5月13日、インド・ベンガルールと米ニューヨークに拠点を置く気候技術企業ミティ・ラボ(Mitti Labs)との提携を発表した。同社が組成する稲作由来のメタン削減カーボンクレジットを、クール・エフェクトの法人・個人購入者ネットワークへ提供する。

クール・エフェクトはこれまでスーパーポリュータント領域で、オゾン層破壊物質(ODS)と埋立処分場由来メタンを2本柱としてきた。今回の提携により、稲作メタンが第三のカテゴリとして加わる。同団体によると、2024〜2025年に取り扱ったカーボンクレジット購入量のうち64%がスーパーポリュータント関連であり、累計336万5,616トン・3,600万ドル(約56億8,000万円)がプロジェクト開発者へ還流したという。

間断灌漑(AWD)と dMRV の組み合わせ

ミティ・ラボが推進するのは間断灌漑(AWD)の導入支援である。同手法は水田の常時湛水を断続的な乾湿サイクルへ転換するもので、収量を維持しつつ水使用を最大40%、メタン排出を最大50%削減できるとされる。同社はすでにインド6州で7万人超の小規模農家と提携し、AWDの実装を進めている。

排出削減量の検証には、地表での実測とリモートセンシングを組み合わせたdMRVを採用する。NASAの支援を受けて開発された同基盤は1ヘクタール未満の小規模区画にも対応し、数百万枚に及ぶ水田からの排出削減を準リアルタイムで監視できる点を特徴とする。ミティ・ラボは2028年までに年間200万トンの発行規模への拡張を計画する。

水資源と農家所得のコベネフィット

稲作は世界のメタン排出の約12%、淡水使用量の約30%を占めるとされ、アジアの作付面積は1億5,000万ヘクタールに及ぶ。AWDの普及は気候緩和とともに、水ストレス地域における水資源保全と小規模農家の収入確保という副便益を直接的に伴う。今回のプロジェクトでは年間250億リットル規模の水資源保全効果が見込まれている。

ミティ・ラボはライトスピード(Lightspeed)、ボイジャー・ベンチャーズ(Voyager Ventures)、シスコ(Cisco)、ボルタ・サークル(Volta Circle)から出資を受け、世界で約3,000億ドル(約47兆4,000億円)規模とされる稲作産業の脱炭素化を事業領域に据える。

一方で、稲作AWD由来のカーボンクレジットは削減系かつ自然由来であり、農地管理の継続性に依存する点で、地中貯留型CDRと同水準の永続性は構造的に担保しづらい。AWDの実施が中断すれば慣行湛水に戻り、削減効果が逆転するリスクは残る。dMRVの精度向上が品質を底上げするとしても、永続性論議そのものを解消するものではない。

編集デスクの視点

本件はクール・エフェクトのスーパーポリュータント戦略における第三カテゴリの追加であり、市場構造を組み替えるほどの転換ではない。年間200万トン規模の発行計画は野心的だが、ボランタリーカーボンクレジット市場全体から見れば一プロジェクトの拡張領域にとどまる。

注目すべきは、稲作AWDが気候緩和・水資源・農家所得の三便益を同一の介入で同時に発生させる構造を持つ点である。

コベネフィットが買い手の購入判断において単なる付加価値から評価軸そのものへと格上げされつつある現状において、本件は「dMRVで定量化された削減量」と「水・所得という非カーボン便益」を同一プロジェクトで束ねるモデルケースとなる。買い手企業のサステナビリティ報告において、こうした多便益型カーボンクレジットの優位性は今後さらに鮮明になるとみる。

ただし削減系・自然由来である以上、永続性とリバーサルリスクは買い手側で別途織り込む必要があり、コベネフィットの強調が品質要件を曖昧化させる方向に作用しないか、購入企業の開示姿勢が問われる。

参考:https://www.businesswire.com/news/home/20260513843496/en/Cool-Effect-Builds-on-Market-Leading-Superpollutant-Portfolio-with-Addition-of-Rice-Methane-Reduction-Project-from-Mitti-Labs

関連タグ AWD
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。