欧州委員会は6月25日、改定TEN-E規則に基づき、水素、電解装置、CO2輸送・貯留の3分野を対象としたPCI(共通利益プロジェクト)/PMI(相互利益プロジェクト)の申請受付を開始した。申請期間は9月30日までとされる。
今回の対象にCO2輸送・貯留が組み込まれた点が要点である。BECCSやDACCSが生む除去系カーボンクレジットは、回収したCO2を運び、貯留する物理インフラがあって初めて成立する。そのインフラ整備に欧州の公的資金を結びつける制度経路が、申請レベルで開いたことになる。
PCI/PMI認定を得たプロジェクトは、環境許認可の迅速化と規制承認の短縮に加え、CEF(欧州連結ファシリティ)を通じた数十億ユーロ規模の公的補助の申請資格を得るという。加盟国間の調整支援や、機関投資家からの可視性向上も伴う。
クリーンテック開発者にとって、認定の取得そのものが資金調達と許認可の確度を左右する関門となる。
申請窓口は分野で分かれる。水素・電解装置はENTSOGのプラットフォーム経由、CO2輸送・貯留は欧州委員会の直接窓口から提出する。電力やスマート電力網、スマートガス網など他分野の受付は、9月に別途開く予定とされている。
提出後は適格性審査を経て、TEN-E地域グループが2027年を通じて候補プロジェクトの評価とランク付けを行う。2026年12月から2027年3月にかけてNRA協議と公開協議が実施され、2027年中頃のACER意見を経て第3次Union listが固まる流れだ。
欧州委は2027年末にリストを含む委任法を採択し、欧州議会・理事会から異議が出なければ2028年初頭に発効する見通しである。制度として運用に乗るまでには、なお1年半以上を要する。
ただし、今回の回収源にはポイントソース型のCCSも広く含まれる。CO2輸送・貯留網への補助を、そのまま除去系CDRの基盤整備に直結すると読むのは早計だとの見方もある。
EUは輸送・貯留インフラへの公的補助を、プロジェクト単位の認定制度とクロスボーダー整合を前提に据えた設計として組み直した。補助の入口を個社支援ではなく、貯留適地と輸送網を国際接続する系統設計の側に置いた点が日本との対照軸になる。
日本でもCCS事業法が成立し、貯留事業の許可制度とGX-ETSの整備が進む。ただ支援の枠組みが個別事業への補助にとどまるなら、CO2を国境を越えて流通させる前提で設計するEUとの思想差が、除去系カーボンクレジットの供給基盤の優劣として後から差となって表れる。日本のCCS制度がどこまで輸送網の国際接続を織り込めるかが、論点となる。