ブラジル政府は2026年3月25日、サンパウロ証券取引所(B3)において、国有林での再生・保全を目的とした初の公共地コンセッション入札を実施し、国内スタートアップのリーグリーン(Re.green)が落札した。
カーボンクレジット収益を財源とする再生林コンセッションの導入は、ブラジルで初めての試みであり、民間資本をアマゾン保全に動員するための新たな市場型モデルとして注目される。
今回の対象は、ロンドニア州のボン・フトゥーロ国有林(Flona Bom Futuro)内の管理ユニット第2区(UMF-II)。総面積は約4万ヘクタールで、うち約6,000ヘクタールが植林・自然再生の対象となり、残る約3万4,000ヘクタールは保全中の立木林として維持される。コンセッション期間は40年間で、土地の所有権はブラジル連邦政府が保持したまま、リーグリーンが事業運営を担う。
落札条件として、リーグリーンはカーボンクレジット販売等による総収入の0.7%を政府に納付する義務を負う。年間のカーボンクレジット収入は約200万ドル(約3億1,900万円)と試算されており、コンセッション期間全体では130万トン超のCO2相当の炭素除去(CDR)カーボンクレジット創出が見込まれる。事業への総投資額は約8,700万レアル(約26億2,000万円)。事業の枠組み策定は、国家開発銀行であるBNDESが技術協力協定を通じて支援した。
本事業の主要な収益源は、再生林からの排出削減量・除去量を裏付けとした自然由来カーボンクレジットの販売である。測定・報告・検証(MRV)を通じて検証された除去量に基づいてカーボンクレジットが発行される見通しで、追加性・永続性の確保がプロジェクトの信頼性の核となる。
社会的側面では、コンセッション契約に地域への利益還元条項が盛り込まれており、周辺に居住する先住民族カリティアナ(Karitiana)族との協働が明記されている。また、ジェンダー平等や先住民包摂の促進、地域からの種子調達・雇用創出も契約上の要件として設けられている。
環境・気候変動大臣のマリーナ・シルヴァ(Marina Silva)は入札式典において、本モデルが劣化した土地を「極めて否定的なもの」から「肯定的なものへ」転換する取り組みだと強調した。
本コンセッションは、ブラジルの「原生植生回復国家計画(Planaveg)」の下で掲げる2030年までに1,200万ヘクタールを再生するという国際公約の達成を後押しするものである。ブラジル林業局(Serviço Florestal Brasileiro)長官のガロ・バトマニアン(Garo Batmanian)によると、現時点で約340万ヘクタールが回復過程にあり、目標の3分の1弱に達している。政府は2027年までに最大30万ヘクタールを同様のコンセッション制度のもとで追加供給する方針を示している。
一方、今回の入札では第1区(UMF-I)については入札者がなく不調に終わった。当局はこれをモデルの黎明期的課題と位置づけ、UMF-Iの今後の戦略を別途検討するとしている。また、科学者からは森林破壊の阻止だけではアマゾンの保全に不十分との指摘があり、大規模な植林・自然再生が不可欠との認識がこうした制度設計の背景にある。
ブラジルが実証しつつあるのは、国有地の劣化林をカーボンクレジット収益で回復させる「市場型再生モデル」の制度化である。日本でも、J-クレジット制度の拡充やGX-ETSの本格始動を受け、国産の自然由来カーボンクレジット供給源の確保が課題となっている。本モデルは、公有地の活用・民間資本の誘引・先住民族との協働という三位一体の枠組みとして、日本の国内コンセッション制度設計の参照軸になり得る。さらに、カーボンクレジットの品質担保(MRV・追加性・永続性)への国際的要求水準が高まる中、本事業がどのレジストリ(登録簿)および方法論のもとでクレジットを発行するかが、今後の市場評価を左右する重要な注目点となる。