2025年後半、西アフリカのニジェール共和国は、パリ協定第6条4項に基づく新たな国連カーボンクレジット・メカニズム(第6条4項メカニズム)への参加要件を正式に整え、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局へ関連文書を提出した。
同国は広大な土地と豊富な日照時間を活かし、再植林やバイオ炭、太陽光発電などのプロジェクトを通じて国際的な民間資金を呼び込む狙いだ。これにより、2030年までの温室効果ガス削減目標である「国が決定する貢献(NDC)」の達成と、持続可能な開発の加速を目指す。
ニジェール政府は、第6条4項メカニズムの下で承認を検討する優先的な活動分野として、農業・林業・その他土地利用(AFOLU)セクターを筆頭に挙げた。具体的には、以下の分野への投資を募る方針である:
同国は特に、土地の劣化と砂漠化が国家的な課題であることから、土壌炭素の増加や植林を通じた排出削減・吸収活動が、適応策と緩和策の両面で不可欠であると強調している。
クレジットの透明性と完全性を確保するため、ニジェールは第6条4項排出削減量(A6.4ERs)の国際的な移転に対し、「相当の調整(Corresponding Adjustment)」を適用することを明言した。
また、承認戦略として、発行される排出削減量(ER)のうち、ニジェール自国のNDC達成のために保持する割合と、国際的な移転(他国の目標達成や国際航空・海運のオフセット用途など)を許可する割合を、承認ごとに明示する方針を示している。
すべてのプロジェクト活動は、首相府直轄の「開発のための国家環境評議会(CNEDD)」が指定国家当局(DNA)として監督する。承認にあたっては、以下の条件が必須となる。
今回のニジェールの動向は、後発開発途上国(LDC)がカーボンクレジットを単なる支援金ではなく、自国の持続可能な開発と気候レジリエンスを強化するための「戦略的金融ツール」として位置づけ始めたことを象徴している。
特に注目すべきは、バイオ炭や土壌炭素貯留といったCDR(炭素除去)への言及だ。これらは近年、クレジットの質(永続性)を重視する買い手企業から高い関心を集めている。ニジェールが「グレート・グリーン・ウォール(緑の長城)計画」と連動してこれらを大規模に展開できれば、アフリカにおける質の高いカーボンクレジット供給の拠点となる可能性がある。
一方で、アフリカ特有の土地所有権の複雑さや、長期的なモニタリング体制の維持が、投資家にとっての「実効性の壁」として残る。同国がどこまで透明性の高いMRV(計測・報告・検証)体制を早期に構築できるかが、民間資金流入の鍵を握るだろう。
参考:https://unfccc.int/sites/default/files/resource/A6.4-FORM-GOV-001_Niger.pdf