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Scope1,2,3とは?わかりやすく解説|What Are Scope 1,2, and 3?

2025.01.01 更新 2026.07.04 読了 約10分
Scope1,2,3とは?わかりやすく解説|What Are Scope 1,2, and 3?

企業のカーボンフットプリントという言葉を耳にする際、それが具体的にどこからどこまでの範囲を指すのか、疑問に思うことはないだろうか。自社の工場から排出される煙だけなのか、それとも製品の原材料が作られる過程や、顧客が製品を使用する際の排出まで含むのか。

本記事では、この問いに明確な答えを与える、温室効果ガス(GHG)排出量の算定・報告における世界標準「GHGプロトコル」が定める「Scope1, 2, 3」という分類について、その全体像と各スコープの関係性を統合的に解説する。なお、定義だけを手早く確認したい場合はScope1,2,3の用語集クイック版も参照してほしい。

Scope1,2,3とは

Scope1,2,3とは、企業が自らの事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)排出量を、その発生源と自社の管理・影響の度合いに応じて3つの範囲(スコープ)に分類するための、国際的な会計フレームワークである。GHGプロトコルが定める分類であり、企業のGHGインベントリ算定の基礎となっている。

この3つのスコープは、企業の排出量を同心円状に捉えると理解しやすい。

  • Scope1:企業が直接管理する、自社からの直接排出。
  • Scope2:自社が購入するエネルギーに由来する、間接的な排出。
  • Scope3:上記以外で、自社の事業活動に関連する、サプライチェーン全体からの間接的な排出。

なぜ3つのスコープに分類するのか

このフレームワークは、企業の排出量を体系的に理解し、管理するために不可欠である。分類の主な理由は以下の通りだ。

責任と管理範囲の明確化

企業は、自らが直接コントロールできる排出(Scope1)、電力の購入先を選ぶことで影響を与えられる排出(Scope2)、そしてサプライヤーや顧客との協働が必要な排出(Scope3)を、明確に区別して認識することが可能となる。

ダブルカウントの防止

社会全体で、同じ排出量が異なる企業によって二重に計上されるダブルカウントを防ぐ役割がある。例えば、ある電力会社のScope1排出量は、その電力を購入する企業のScope2排出量として計上されるため、明確な境界線が引かれるのである。

戦略的な削減計画の策定

この分類により、企業は自社の排出量の「ホットスポット」を特定し、どこから削減努力を始めるべきか、戦略的に計画を立てることが可能になる。

各スコープの詳細解説

Scope1 直接排出量(Direct Emissions)

事業者が所有・管理する排出源から、物理的に直接排出されるGHGを指す。自社の工場における燃料の燃焼、社用車の排気ガス、自社設備からの冷媒フロンの漏洩などが具体例として挙げられる。キーワードは「自社で直接コントロール」である。

Scope2 エネルギー由来の間接排出量(Indirect Emissions from Energy)

事業者が他社から購入した電気、熱、蒸気の使用に伴い、そのエネルギーの製造元で発生する間接的なGHG排出を指す。オフィスや工場で使用する、電力会社から購入した電力がこれにあたる。キーワードは「購入したエネルギー」である。

Scope3 その他の間接排出量(Value Chain Emissions)

Scope1、2以外の、企業のバリューチェーン全体から発生する、あらゆる間接排出を指す。多くの場合、これが企業の総排出量の最大の割合を占める。GHGプロトコルでは、15のカテゴリーに分類されている。

具体例としては、上流工程における「購入した原材料の製造」「従業員の通勤」「外部委託した輸送」、下流工程における「販売した製品の顧客による使用」「製品の廃棄」などが挙げられる。キーワードは「サプライチェーン全体」である。

国内外動向:開示義務化が進むScope1,2,3

Scope1,2,3という分類は、GHGプロトコルによる自主的な算定ツールという位置づけを超え、国際的な開示制度に組み込まれる形で、法定開示の基礎データへとその役割を強めている。

国際的には、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が策定した気候関連開示基準「IFRS S2号」が、Scope1・2に加えてScope3排出量の開示を求めている。初年度はScope3開示を省略できる経過措置が設けられているが、2025年12月にはGHG排出量開示の実務負担軽減を目的とした改訂(2027年1月1日以後開始する報告期間から適用)も公表されており、Scope3を含む開示の実効性を高める方向で制度が整備されつつある。

米国カリフォルニア州では、気候関連企業データ説明責任法(SB253)等に基づき、カリフォルニア州大気資源局(CARB)が2026年2月に実施規則を採択した。対象企業はScope1・2排出量を2026年8月10日までに初回報告する必要があり、Scope3排出量については2027年の報告分(2026年度データ)から開示対象となる見通しである。

日本国内では、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が2025年3月にサステナビリティ開示基準を確定し、GHGプロトコルに準拠したScope1・2・3(Scope3は15カテゴリー別)の開示を求める内容とした。2026年2月には金融庁がこの基準の適用を法的に義務付ける内閣府令を公布しており、プライム市場上場企業のうち時価総額3兆円以上は2027年3月期から、1兆円以上は2028年3月期から、5,000億円以上は2029年3月期から、それ以外のプライム市場企業は2030年以降から、それぞれ段階的にScope1,2,3の開示が義務化される見通しである。

このように、Scope1,2,3という分類は、単なる自主的な環境配慮の指標にとどまらず、投資家や規制当局に対する法定開示の共通言語へと役割を変えつつある。

フレームワークのメリットと課題

GHGプロトコルの導入には、メリットと同時に課題も存在する。

メリット

最大の利点は、企業の気候への影響とリスクの全体像を包括的に把握できる点にある。また、国際的に統一された基準であるため、企業間の比較可能性が高まる。さらに、サプライチェーン全体を巻き込んだ体系的な排出削減を促進する効果も期待できる。

課題

一方で、Scope3の算定には極めて高い複雑性が伴う。世界中に広がるサプライヤーから正確なデータを収集することは、多大なコストと労力を要し、多くの企業にとって大きなハードルとなっている。特に中小サプライヤーの排出実績の精度や、削減が難しい残余排出量に充てるカーボンクレジットの品質評価には専門的な知見が求められるため、CDR PROのような専門プラットフォームを活用して、サプライヤーの排出データやクレジット品質を客観的に評価する動きも広がっている。

また、コントロールの限界も課題である。企業は自社のサプライヤーや顧客の排出に対し、直接的な管理権を持たず、影響力を行使することしかできないため、削減活動の難易度は高くなる。

まとめ

本記事では、Scope1,2,3というGHGプロトコルのフレームワークが、企業の排出量を体系的に捉え、管理するための世界標準であることを解説した。

  • 排出量は、Scope1(直接)、Scope2(エネルギー由来間接)、Scope3(その他間接・サプライチェーン)の3つに分類される。
  • このフレームワークが、企業のGHGインベントリの基礎となる。
  • 多くの企業にとって、Scope3が最大の排出源であり、その管理が重要となる。
  • 日本のSSBJ基準や米カリフォルニア州の開示規制など、Scope1,2,3の開示は自主的な取り組みから法定義務へと移行しつつある。

企業の気候変動への責任は、自社の活動範囲を超え、バリューチェーン全体に及ぶものである。このフレームワークは、企業の責任範囲を工場の煙突から原材料の生産地まで拡大させるものであり、サプライチェーン全体での脱炭素化を促進する基盤として機能している。

より簡潔な定義はScope1,2,3の用語集クイック版にまとめている。

In English: What Are Scope 1, 2, and 3?

Scope 1, 2, and 3 are the classification system defined by the GHG Protocol for categorizing a company’s greenhouse gas (GHG) emissions according to their source and the company’s degree of control over them. Scope 1 covers direct emissions from sources a company owns or controls, such as fuel combustion at its own facilities or company vehicles. Scope 2 covers indirect emissions from purchased electricity, heat, or steam. Scope 3 covers all other indirect emissions across the value chain — both upstream (purchased goods, employee commuting, outsourced transport) and downstream (customer use of sold products, end-of-life disposal) — broken down into 15 categories under the GHG Protocol. For most companies, Scope 3 represents the largest share of total emissions.

This three-scope framework clarifies accountability, prevents double counting between companies, and enables strategic identification of emissions “hotspots.” It is increasingly the basis for mandatory disclosure regimes: the ISSB’s IFRS S2 requires Scope 1–3 reporting (with first-year transition relief for Scope 3), California’s SB 253 requires in-state companies to report Scope 1 and 2 emissions by August 10, 2026 and Scope 3 from 2027, and Japan’s SSBJ standards will phase in mandatory Scope 1–3 disclosure for Prime Market companies from fiscal year 2027 onward, based on market capitalization tiers.

The main challenge remains Scope 3: collecting accurate data from a global network of suppliers is costly and complex, and companies have only indirect influence — not direct control — over their suppliers’ and customers’ emissions.

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。