アマゾン(Amazon)は2026年6月10日、英国の適格企業を対象にカーボンクレジット調達サービスを開始したと発表した。同サービスの提供は、2025年3月の米国での開始以来、初の国外展開となる。
提供基盤は、アマゾンが2024年に立ち上げたサステナビリティ支援プラットフォーム「Sustainability Exchange」である。残余排出への対処を目的に、審査済みのカーボンクレジットを企業が調達できる仲介機能を担う。
参加には2要件を満たす必要がある。2050年までのネットゼロ目標の設定(Scope1,2,3を対象)と、GHG排出量の定期的な測定・公開報告である。
この要件設定により、カーボンクレジットが自社の排出削減を代替するのではなく補完する位置づけであることを担保する設計としている。
提供ポートフォリオは複数の気候ソリューションにまたがる。コートジボワールおよびガーナにおける管轄区域型の森林減少抑制プログラム、劣化地での生態系再生による除去、DAC、冷媒の破壊と水田メタンの削減を含むスーパー汚染物質(superpollutant)の削減、再生可能ディーゼル等の低炭素燃料インセットである。
英国の6社が初期採用企業として名を連ねる。
アマゾンは、ポートフォリオの全プロジェクトを自社で審査し、ボランタリーカーボンクレジット市場で流通するカーボンクレジットのうち同社の品質基準を満たすのはごく一部にとどまるとしている。あわせて買い手側のリスクを引き受け、複数年にわたる購入契約の管理やリタイアメントの追跡・報告も担う。The Climate Pledge署名企業には割引が適用される。
本件の要点は、カーボンクレジットの調達と品質判断を一企業のプラットフォームが集約する構造にある。
ボランタリーカーボンクレジット市場が透明性と信頼性の課題を抱えてきたなか、調達経験と規模を持つ事業者が審査機能を提供することは、買い手の参入障壁を下げ、品質の底上げにつながりうる。
一方で、何を「質の高いカーボンクレジット」とみなすかの判断が特定の民間プラットフォームに集約されることは、市場の評価基準が一私企業の選別に依存する構造を生む。
今回の英国展開は、それ自体としては既存サービスの地理的拡張にとどまる。注視すべきは、大手調達事業者による買い手側の選別が、ICVCMのコアカーボン原則(CCPs)等の公式な品質枠組みと並行して、もう一つの事実上の品質シグナルとして機能し始めている点である。
カーボンクレジットの品質判断が第三者認証機関と民間プラットフォームの双方に分散していくなかで、両者の基準がどこで一致し、どこで乖離するかが今後の論点となる。