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三井住友海上がJ-クレジット事業に参入 EVオーナー基点の創出モデルでGX-ETS第2フェーズの需要に対応

2026.04.21 読了 約5分
三井住友海上がJ-クレジット事業に参入 EVオーナー基点の創出モデルでGX-ETS第2フェーズの需要に対応
出典:イメージ

MS&ADインシュアランス グループの三井住友海上火災保険は2026年4月17日、J-クレジットの創出・販売事業「MS&ADカーボンクレジット」を開始したと発表した。

自動車保険契約者などの顧客基盤を活用し、電気自動車(EV)オーナーの温室効果ガス(GHG)排出削減量をJ-クレジット化する。背景には、2026年度に始まる排出量取引制度(GX-ETS)第2フェーズで一部企業のGHG削減取り組みが義務化される見通しがあり、損害保険会社がカーボンクレジットの供給側として参入する動きが鮮明となった。

プログラム型プロジェクトを自社組成

三井住友海上はJ-クレジット制度におけるプログラム型プロジェクトの代表実施者となり、複数の小規模なCO2削減活動を束ねる形でJ-クレジットを発行・販売する。第一弾として、EVおよびプラグインハイブリッド車(PHEV)の利用に伴うCO2削減量をカーボンクレジット化する「EVラボ」プログラムを4月から本格運用する。同等クラスのガソリン車との比較で算定したCO2削減量を集約し、J-クレジットとして登録・リタイアメント用途で販売する仕組みである。

注目すべきは、損害保険会社が持つ膨大な自動車保険契約者基盤をカーボンクレジットの創出源として活用する点である。EV所有者は個別では年間数百キログラムから数トン規模のCO2削減にとどまるが、これを保険契約というチャネルで集約することで、プログラム型プロジェクトとしての商業性が確保される。

バイウィルとの提携で品質と流通網を確保

本事業は、企業や自治体のJ-クレジット創出を専門とする株式会社バイウィルとの資本業務提携が基盤となる。三井住友海上の子会社である三井住友海上キャピタルがすでに出資しており、バイウィルが持つJ-クレジット組成ノウハウと測定・報告・検証(MRV)の体制を活用する。

「EVラボ」プログラムは、両社の共同運営として位置づけられている。J-クレジットの方法論選定、ベースライン設定、モニタリング設計といった専門的工程をバイウィルが担い、三井住友海上が顧客接点と販売網を提供する役割分担となる見込みである。

GX-ETS第2フェーズ義務化が需要を喚起

三井住友海上がカーボンクレジットの供給側に回る判断の背景には、2026年度開始のGX-ETS第2フェーズにおける義務化スキームがある。経済産業省GXグループが2025年7月に公表した「排出量取引制度の詳細設計に向けた検討方針」によれば、義務化の対象はCO2直接排出量が直近3カ年平均で10万トン以上の企業となり、対象社数は300〜400社程度と見込まれている。

これら大口排出企業は、自社削減で目標未達となった分について排出枠または認められたカーボンクレジットで埋め合わせる必要がある。J-クレジットがどこまでGX-ETSのコンプライアンス用途で活用可能となるかは制度設計の最終段階にあるが、需給両面でカーボンクレジット市場が拡大することは確実視されている。

MS&ADグループのGX支援メニューに位置付け

三井住友海上は本事業を、MS&ADインターリスク総研が提供する既存の脱炭素支援メニュー(Scope1Scope2Scope3算定、SBT目標設定支援、TCFDおよびTNFD開示支援)と連携させる。GHGプロトコル準拠の排出量算定から、削減計画策定、カーボンオフセット手段の提供、情報開示までをワンストップで提供する体制とする。

社内では「炭素会計アドバイザー」などの資格を持つ社員を「サステナビリティ人財」として認定し、企業ごとの戦略に応じたカーボンクレジット活用提案を行うとしている。

森林・農業分野への拡大

三井住友海上は今後、包括連携協定を結ぶ全国自治体と連携した森林保全プロジェクトや、農業分野(間断灌漑(AWD)などの方法論が想定される)への拡大を予定している。EVを起点とした回避系カーボンクレジットから、森林吸収による除去系自然由来カーボンクレジットまで領域を広げる構想である。

損害保険会社がカーボンクレジット創出事業に本格参入する動きは、日本のJ-クレジット市場の構造変化を象徴している。膨大な顧客接点を持つ金融機関がプログラム型プロジェクトの代表実施者となれば、これまで個別事業者単位では成立しにくかった小口削減活動がカーボンクレジット化される余地が広がる。

一方、EV起点の回避系カーボンクレジットについては、ベースライン(同等クラスのガソリン車)の妥当性、追加性の証明(補助金や規制との二重計上回避)、ダブルカウント防止が論点となる。GX-ETS第2フェーズの対象企業(CO2排出量10万トン以上)にとっては、国内供給源の多様化は歓迎すべき動向だが、J-クレジットのコアカーボン原則(CCPs)との整合性や、調達時のデューデリジェンスはこれまで以上に重要となる。

カーボンクレジットを「コンプライアンス手段」として位置づける段階に日本市場が移行するなか、品質ガバナンスの実効性が試される局面である。

参考:https://www.ms-ins.com/company/csr/climate_change/jcredit.html

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。