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NTTデータ、クライムワークスと長期CDR契約 日本IT大手が技術系炭素除去の本格調達へ踏み出す

2026.05.09 読了 約4分
NTTデータ、クライムワークスと長期CDR契約 日本IT大手が技術系炭素除去の本格調達へ踏み出す
出典:Climeworks

スイスのDAC大手クライムワークス(Climeworks)は2026年4月30日、NTTデータグループとの長期パートナーシップ契約締結を発表した。今後10年間で数十万トン規模のカーボンクレジットを供給する大型ポートフォリオ契約であり、クライムワークスにとってAIインフラ大手との初の大型CDR契約となる。

日本のIT・AIインフラ事業者として技術系CDRに本格的にコミットした事例は限定的であり、国内におけるCDR調達戦略の転換を示唆する案件である。

契約の概要

NTTデータのポートフォリオは、技術系と自然系のCDR手法を組み合わせた構成で、クライムワークスの科学的デューデリジェンスを経て選定されている。残余排出量への対処に焦点を絞り、削減努力では対処しきれない部分を補完する位置付けだ。契約金額は公表されていないが、クライムワークスのDAC由来カーボンクレジットの現行価格帯は1トンあたり600〜1,000ドル(約9万4,000〜15万7,000円)程度と言われており、技術系・自然系をブレンドしたポートフォリオ価格はこれよりも低位とみられる。クライムワークスは2030年までにDACの除去コストを1トンあたり250〜350ドル(約3万9,000〜5万5,000円)まで引き下げる目標を掲げており、契約期間中の段階的な価格低下を織り込んだスキームと推察される。

NTTデータグループ社長兼CEOの佐々木裕は、「気候変動対策には実行可能な施策、明確な優先順位、そして透明性が必要である」と述べ、自社の排出削減努力に加え高品質CDRカーボンクレジットを残余排出に充てる方針を改めて示した。

NTTデータの「ネットゼロ2040ビジョン」

NTTデータグループは「ネットゼロ2040ビジョン」のもと、データセンター事業のScope 1・2を2030年までに、世界各地のオフィスを2035年までに、そしてScope 3を2040年までにネットゼロ化する目標を掲げている。2024年度の再生可能電力比率は56%で、前年度から7ポイント上昇した。2025年度報告書でも同様の進捗が見込まれているという。同社の場合、AIワークロードを支えるデータセンター事業がGHG排出の中核を成すため、再エネ電力比率の引き上げと並行して残余排出への対処手段の確保が事業継続上の論点となる。

AI経済の拡大とCDR調達の連動

クライムワークス共同CEOで共同創業者のクリストフ・ゲバルト(Christoph Gebald)は、「AIが拡大しデータセンター建設が進むなかで、企業はカーボンフットプリントを管理するための明確で信頼性のある手段を必要としている」とし、AI経済とCDR調達の本格的な統合が始まっていると位置付けた。

データセンターの電力需要はAI学習・推論ワークロードによって急速に拡大しており、ハイパースケーラーやインフラ事業者を中心に長期CDRオフテイク契約の締結が加速している。一方で、契約量の合計は世界の排出量に比して依然として小さく、データセンター成長を相殺するには遠く及ばないとの指摘もある。SBTiおよびIPCCは、CDRが直接排出削減の代替にはなり得ず、ネットゼロ経路における残余排出への補完手段にとどまるべきだと繰り返し強調しており、残余排出の定義と正当化の厳格性が今後の論点となる。

日本企業のCDR調達と国内サプライヤー育成の遅れ

日本企業によるCDR調達は、これまで海運、エネルギー、金融など特定セクターが先行してきた。IT・AIインフラ分野で日本のグローバル大手が10年単位の長期ポートフォリオ契約を締結した今回の事例は、調達主体の業種拡大という観点で意義が大きい。

ただし、契約相手は欧州(スイス)のクライムワークスであり、国内CDRサプライヤーには大規模な技術系プレイヤーがほぼ存在しないという構造的課題が改めて浮き彫りとなる。

J-クレジット制度のもとでバイオ炭やJブルークレジットの方法論整備は進むものの、DACやBECCSといった技術系CDRの大規模商業案件は国内で確立されていない。経済産業省・環境省が進める地球温暖化対策計画でもDACCSの方法論整備や国内CDR産業育成が課題として明記されているが、需給双方の規模拡大には時間を要する。

ついに日本のIT・AIインフラ大手が技術系CDRの本格調達に踏み出した点は、国内CDR市場の臨界点を示すシグナルである。一方で、長期ポートフォリオ契約の供給元が欧州プレイヤーである事実は、国内CDRサプライヤー育成の遅れを冷徹に突きつける。

日本企業がCDR市場で「買い手」としての存在感を強めるほど、国内に技術系CDRの供給基盤が整っていなければ、調達コストの構造的劣位と地政学的リスクが固定化される懸念がある。GX推進法のもとでの国内炭素市場整備と並行して、国産CDR技術の事業化加速こそが次の論点である。

参考:https://climeworks.com/press-release/climeworks-partners-with-ntt-data-group

関連タグ CDR DAC
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。