日本植物燃料(Nippon Biofuel Co., Ltd.、以下「NBF」)は、アフリカの自社農園で生産したジャトロファ由来バイオ燃料(SVO:ストレート植物油)を日本へ供給し、栗林商船株式会社が運航するRORO船での実航路試験を開始したと発表した。
農業生産から燃料供給までを日本企業が一貫して担う再生可能エネルギー供給モデルとして、海運の脱炭素化とエネルギー安全保障の強化を同時に目指す取り組みとして注目される。
今回の試験では、ジャトロファ由来SVOを既存のC重油に約10%混合し、定期航路での運航を実施する。検証項目は主機関への影響、燃焼特性、燃料系統への影響、および実運航条件下での運用性である。
国際海事機関(IMO)は2050年頃までに海運分野の温室効果ガス(GHG)排出をネットゼロとする目標を掲げており、低炭素燃料の導入は業界全体の喫緊の課題となっている。ジャトロファ由来SVOは既存船舶でそのまま利用可能であり、大規模な改造を必要としない点が実用上の大きな利点である。
NBFはアフリカで栽培から燃料生産までのサプライチェーンを構築している。現時点の栽培拠点はガーナ(自社農園)とモザンビーク(契約栽培)の2カ国である。日本企業が海外で農業生産から燃料供給までを統合的に行う本モデルは、石油産業における油田開発に相当する再生可能エネルギー資源開発の新たな形態と位置づけられる。
本実証試験は、2025年度に実施された経済産業省「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」によるフィージビリティスタディ(F/S)の成果を踏まえたものであり、海運会社や総合商社などとの連携のもとで検証が進められてきた。
本事業のカーボンクレジット戦略として特に注目されるのが、搾油残渣からバイオ炭を生産し農地へ還元するプロセスである。バイオ炭の土壌施用は、土壌改良と炭素隔離を同時に実現する手法であり、将来的には植林(ARR)由来のカーボンクレジットやバイオ炭カーボンクレジットなどの創出につながる可能性がある。
ジャトロファは非可食性の油糧植物であるため食料生産と競合せず、アフリカの農家との連携による栽培モデルは農村地域における新たな収入機会の創出にも寄与する。NBFは燃料供給に加え、農村開発と炭素除去(CDR)を組み合わせた持続可能な事業モデルの構築を進めている。
NBFは農林水産省や国際機関(WFP、FAO)、JAグループのアジア農業協同組合振興機関(IDACA)とも連携し、農作物流通のデジタル化やジャトロファ栽培のアグロフォレストリー推進を通じて、持続可能な農業と農村開発の実現にも取り組んでいる。
本事業は、海運脱炭素という排出削減の文脈にとどまらず、バイオ炭による炭素隔離とカーボンクレジット創出を組み込んだ点で、回避系クレジットと除去系クレジットの双方を一つのバリューチェーン内で生み出しうるモデルとして注目に値する。
ボランタリーカーボンクレジット市場においてバイオ炭カーボンクレジットへの需要は急速に拡大しており、プロアース(Puro.earth)など認証機関の方法論整備も進む。
日本の海運業界がIMO規制対応を迫られるなか、燃料転換とカーボンクレジット創出を同時に実現する本モデルは、CORSIAや今後のGX-ETSにおけるオフセット活用を検討する企業にとっても有益な先行事例となりうるだろう。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000019049.html