大分県とENEOSは2026年3月27日、大分県の県営林で創出される森林由来のカーボンクレジット(J-クレジット制度)の売買に関する協定を締結した。
ENEOSは2026年1月に実施された大分県の公募型プロポーザルで採択されており、今回の協定締結はその正式移行を意味する。地方自治体と大手エネルギー企業が森林管理の財源確保とカーボンオフセットを同時に実現する取り組みとして、国内カーボンクレジット市場における地産地消モデルの一例として注目される。
本協定において、大分県は県営林の森林経営計画に基づく搬出間伐・路網整備などの施業を通じてCO2吸収量を測定・認証し、J-クレジット制度上のカーボンクレジットとして創出する。得られた収益は森林整備の長期的かつ安定的な財源として充当され、水源涵養や生物多様性保全といったコベネフィット(Co-benefit)の維持にも寄与する。
一方ENEOSは、創出されたカーボンクレジットを自社の事業活動における温室効果ガス(GHG)排出量のカーボンオフセットに活用する。同社は大分製油所を県内に有する地元事業者でもあり、排出源に地理的に近接したカーボンクレジットを調達するという構造となっている。
ENEOSグループは、Scope1・Scope2の温室効果ガス排出量を2040年度までに2013年度比73%削減し、2050年度にカーボンニュートラルを達成することを中期・長期目標として掲げている。森林由来のカーボンクレジットの活用は、再生可能エネルギーへの転換や省エネ投資と並行して進める排出削減補完策として位置づけられている。
同社が「エネルギー・素材の安定供給」と「カーボンニュートラル社会の実現」の両立を掲げるなかで、地域密着型のカーボンクレジット調達は、サプライチェーンの脱炭素化と地域経済振興を同時に訴求できる点で戦略的意義を持つ。
J-クレジット制度は経済産業省・環境省・農林水産省が共同で運営する国内認証制度であり、森林管理由来のカーボンクレジットは同制度の主要カテゴリーの一つである。GX-ETSの本格稼働を見据えた国内排出量取引制度(ETS)の整備が進むなか、地方自治体が保有する森林資源のカーボンクレジット化は、林業の収益構造改革と企業のScope1・2削減義務への対応を結びつける政策的文脈においても重要性を増している。
製油所を擁する重工業事業者が地元自治体の森林カーボンクレジットを直接調達する本モデルは、地理的整合性とトレーサビリティを重視する国内カーボンクレジット調達の先行事例として評価できる。
今後、GX-ETSにおけるカーボンクレジットの活用要件が明確化されるにつれ、自治体保有林を活用したJ-クレジットへの企業需要はさらに拡大する可能性が高く、類似スキームの横展開を検討する地方自治体・企業担当者にとって参照価値のある事例となろう。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000104.000039980.html