経済産業省は2025年4月21日、二国間クレジット制度(JCM)を通じたカーボンクレジット創出を目的とする実現可能性調査(JCM FS)の公募を開始した。受託機関は三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)で、同社地球環境部JCM FS事務局が窓口を担う。
本公募は、日本が締結している二国間クレジット制度(JCM)を活用し、途上国等への脱炭素技術の普及と温室効果ガス(GHG)の排出削減・カーボンクレジット化を一体的に実現することを目的とする。
今年2月に改定された日本のNDC(国が決定する貢献)においては、2035年度に2013年度比60%削減、2040年度に同73%削減という目標が明記された。JCMについては、官民連携による2030年度までの累積1億トン、2040年度までの累積2億トンの国際的な排出削減・吸収量確保が掲げられており、本FS事業はその中核的な推進手段に位置づけられる。
採択件数は最大15件程度を想定し、予算総額は2億5,000万円(1件あたりの上限は1,500万円・税抜)。FS実施期間は契約締結日から2026年2月6日まで。
審査に際しては、第三者の有識者委員会が評価を担い、MURC事務局は採否に関与しない中立的な管理体制が確保されている。
調査対象国は、現行のJCMパートナー31カ国および今後署名が見込まれる新規国。
対象技術はエネルギー起源CO2の排出削減に資するものを基本とするが、公募要領は特に炭素回収・貯留(CCS)を活用する案件への応募を明示的に促しており、他の技術と審査評価が同等の場合、CCS関連提案を優先させる旨が記載されている。これは、2024年12月に日インドネシア合同委員会で採択されたCCSに関するルール・ガイドライン類を背景とするものである。
FS実施に際しては、JCM提案方法論ガイドラインに沿った方法論案(英文)の作成が義務付けられる。具体的には、エネルギー起源CO2の削減量をトン/年で記載すること、エネルギー起源以外のGHGについても温室効果ガス(GHG)削減量として併記すること、さらにCO2e(CO2換算)あたりの削減コストの試算が求められる。
なお、NEDO JCM実証事業への出口を想定するプロジェクトについては、実証モニタリング期間中に1,000トン以上のJCMカーボンクレジットの発行可能性と、実証終了後の普及展開期間で年間10,000トン以上の排出削減効果が採択要件の目安として示されている。
環境省設備補助事業への出口を想定するプロジェクトでは、費用対効果4,000円/CO2eトン以下(特定の技術・地域は3,000円または2,500円以下)が目安とされる。
FS終了後の展開として、①NEDOによるJCM実証事業、②民間資金を中心とする民間JCMプロジェクト、③環境省の二国間クレジット制度資金支援事業(設備補助)が明示されており、いずれかへの応募が見込まれる提案が優先採択される。
FS採択事業者はFS終了後も3年間・年1回程度、経済産業省地球環境対策室への進捗報告が義務付けられる。また、FS期間中に創出されたカーボンクレジットについては、日本政府の資金貢献に応じ、政府側がカーボンクレジットの配分を求める場合があることが明記されており、民間企業はクレジット帰属の条件を事前に精査する必要がある。
提案者は日本に拠点を有する法人に限定され、コンソーシアム形式の共同申請も可。ただし、コンサルティング会社・調査会社の単独提案は原則不採択とされており、事業化および民間JCMプロジェクト化を主体的に担う企業の参画が必須条件とされている。再委託費率は原則として事業費総額の50%以下。
本公募でCCS案件が明示的に優先採択対象に据えられた点は、JCM制度の技術射程が従来の省エネ・再エネ中心から「除去・貯留」系へ拡張していることを示す重要なシグナルである。
炭素回収・貯留(CCS)を海外展開の柱に据える大手商社・資源メジャーにとっては、JCM FSをCCS案件の事業化前調査として活用し、その後の民間JCMプロジェクト化に繋げるルートが現実的な選択肢となってきた。
また、AZEC構想と連動した東南アジア・中東諸国へのCCS展開を検討する電力・重工業各社にとっても、本FS制度の枠組みは初期リスクを低減しながら国際カーボンクレジット創出の実績を積む好機となる。
GX-ETSや国内J-クレジット制度と並行してJCMクレジットを調達・活用するポートフォリオ戦略が、日本企業の脱炭素アーキテクチャ上でより重要な位置を占めていくことになろう。