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日本・オマーン、JCM構築で協力覚書に署名 パートナー国は32か国に拡大

2026.04.21 読了 約4分
日本・オマーン、JCM構築で協力覚書に署名 パートナー国は32か国に拡大
出典:イメージ

2026年4月9日、オマーン国において、芹澤清駐オマーン日本国特命全権大使とサリム・アル・ウーフィ(Salim bin Nasser Al Aufi)オマーン・エネルギー鉱物資源大臣との間で、二国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)の構築に関する協力覚書が署名された。

これにより、オマーンはモンゴル、ベトナム、インドネシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)などに続き、JCMパートナー国の32か国目となった。

協力覚書の骨子、パリ協定6条2項に準拠した制度設計

今回の協力覚書で両政府が合意した内容は、大きく次の三点に整理される。

第一に、両政府はパリ協定の2度目標および1.5度努力目標を追求するため、気候変動対処における二国間協力の強化策としてJCMを構築する。

第二に、パリ協定6条2項(協力的アプローチ)に関する指針に適合する形で、JCMの下で発行されるJCMカーボンクレジットの一部を国際的に移転される緩和成果(ITMO)として日本のNDC(国が決定する貢献)達成に活用できること、ならびにその残余がオマーンのNDC達成に寄与することを相互に確認した。

第三に、両政府はJCMの透明性と環境十全性を確保しつつ、制度を簡素かつ実用的に維持するとした。

この構成は、6条2項の運用上の肝であるcorresponding adjustment(相当調整)を前提とした典型的な二国間協定のスキームであり、ダブルカウント防止と環境十全性の担保が鍵となる。

オマーンが加わる戦略的意味

オマーンは湾岸協力会議(GCC)の一角を占め、豊富な石油・ガス資源を背景としつつ、近年は「オマーン・ビジョン2040」および「2050年ネットゼロ」目標の下で、グリーン水素、再生可能エネルギー、そして炭素回収・貯留(CCS)分野への投資を急速に拡大している。商用規模での脱炭素技術展開を急ぐ同国と、測定・報告・検証(MRV)の運用ノウハウおよび資金動員力を持つ日本との利害は補完的である。

また、日本政府が公表したJCMの対象分野拡大方針。

従来の省エネルギー・再生可能エネルギー・廃棄物分野に加え、農業・泥炭地管理等の非エネルギー排出削減、CCS、さらには炭素除去(CDR)までを踏まえると、オマーンの産業構造からはCCS/CCUSおよびグリーン水素関連案件の形成が有力視される。

日本のJCM累積目標、2030年度までに1億トン、2040年度までに2億トン

2025年2月に閣議決定された地球温暖化対策計画では、JCMを通じた国際的な排出削減・吸収量について、2030年度までに累積でCO2約1億トン、2040年度までに累積でCO2約2億トンの確保が目標として掲げられている。

この目標達成に向けた政策の柱は三つある。

第一に、プロジェクト開発ソーシングの領域・規模・ルートの拡大である。削減ポテンシャルの大きい案件の優先的発掘を進めるとともに、政府資金のみならず民間資金中心のJCM案件についても、技術面およびMRVへの国の支援を強化する方針が示されている。

第二に、担い手の能力向上である。パリ協定6条実施パートナーシップ(A6IP)やアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)、G7等の国際枠組みを通じたカーボンマーケットに関する知見・経験の共有を進める。

第三に、事業運営の効率化とインフラ整備である。改正地球温暖化対策推進法に基づく指定実施機関の立ち上げ、ならびにJCMカーボンクレジットの発行量増大を見据えたレジストリ(登録簿)システムの堅牢化が進められる。

オマーンの加盟は、JCMが中東・湾岸地域への展開を本格化させる節目となる。既にサウジアラビアとUAEがパートナー国に名を連ねるなか、オマーンが加わることで、産油国側のハード・トゥ・アベイト領域に日本の技術と資金をどう投入するかという戦略的問いが一層鮮明になる。

日本企業にとっては、CCS/CCUS、グリーン水素、産業プロセスの高度省エネ等の技術を梃子にJCM案件のオフテイクやバンカビリティを確保しつつ中東市場へ進出する好機となる一方、プロジェクトの追加性永続性の立証、およびダブルカウント回避に向けた6条2項運用ルールへの厳格な準拠が、事業の信頼性を分ける分水嶺となる。

特にCCS案件については貯留の永続性モニタリング体制の設計が、中東案件の信用力を左右する最重要論点となるだろう。

参考:https://www.env.go.jp/press/press_03308.html

関連タグ JCM アジア
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。