環境省の拠出金により、国際連合工業開発機関(UNIDO)は、二国間クレジット制度(JCM)に基づくアフリカ5カ国向け脱炭素プロジェクト提案の2026年公募を6月19日に開始した。締切は8月28日(ウィーン現地時間)。対象国はケニア、エチオピア、チュニジア、セネガル、タンザニアで、日本企業を代表事業者または構成員に含む国際コンソーシアムが応募できる。
対象は再生可能エネルギー設備や省エネルギー設備の導入支援であり、グラントは一件あたり上限200万ドル(約3億2,000万円)、対象経費の補助率は最大75%となる。費用対効果はCO2 1トンあたり30ドル(約4,900円)を原則とする。完工は2028年夏を目途とし、その後に設備稼働とモニタリング、JCM方法論案の合同委員会への提出へ移行する。GHG削減量のモニタリング期間は最低5年に設定されている。
本件は既存・類似のJCM方法論の活用を前提としており、新規方法論を要する提案は対象外となる。早期のプロジェクト形成を優先した設計といえる。
なおグラントの対象は完工までの経費に限られ、以降のJCMプロセスに伴う費用は事業者の自己負担となる。福岡方式を用いた廃棄物処分場からのメタン削減も今回の対象外とされた。
UNIDOを通じたアフリカ向けJCM支援は2022年度から続いており、今回の公募はその年次運用の継続にあたる。日本がアジアを中心に積み上げてきたJCMの裾野を、アフリカへ広げる枠組みが定例化したと見るのが実態に近い。
制度面で見れば、対象5カ国はパリ協定6条のもとでJCMクレジットの供給源に組み込まれていく。創出されたクレジットはホスト国と日本のあいだで相当調整を経て、ITMOとして日本側に移転される。グラントによる早期形成支援は、この供給ルートを行政主導で太くする手立てと位置づけられる。
一方で、ホスト国が自国のNDC達成に要する削減分まで日本へ移転すれば、ホスト国側の脱炭素目標との整合性が問われる局面も生じうる。相当調整の運用は、6条クレジットの信頼性を左右する論点であり続けている。
本件は新規の制度設計ではなく、UNIDOを通じたアフリカ向けJCM支援の年次公募として位置づけられる。注目すべきは支援規模そのものより、6条の枠組みのなかでアフリカが日本のクレジット供給源として定着しつつある点にある。
グラント依存と既存方法論前提という設計は、案件形成のハードルを下げる反面、創出されるクレジットの量と種類を手持ちの方法論の範囲に縛る。日系企業にとっては、設備導入への補助以上に、相当調整を経たJCMクレジットを自社の6条活用へどう組み込むかが、参入判断を左右する。