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プラスチッククレジットとは?意味・仕組み・課題をわかりやすく解説|What Are Plastic Credits?

2025.01.01 更新 2026.07.04 読了 約13分
プラスチッククレジットとは?意味・仕組み・課題をわかりやすく解説|What Are Plastic Credits?

気候変動・国際開発・サステナブルファイナンスの視点から、近年注目を集めるプラスチッククレジット(Plastic Credits)について解説する。

途上国では廃プラスチックの回収・再利用インフラが不足しており、このギャップを埋めるための資金動員が喫緊の課題である。プラスチッククレジットは、資金循環を通じて排出抑制・回収・再利用を促進する仕組みとして期待されている。また、途上国の地域コミュニティやインフォーマル(非公式)な廃棄物回収労働者を含む公正な移行を実現する可能性も秘めている。

本稿では、用語の定義から仕組み、国内外の動向、メリット・課題に至るまで、市場の信頼性の観点を交えて詳述する。一文での定義を先に確認したい場合は、クイック版(プラスチッククレジット)も参照されたい。

プラスチッククレジットとは

プラスチッククレジットとは、「プロジェクト活動によって回収・管理・再利用、または使用回避された一定量のプラスチックを表す、譲渡可能な証書単位」である。この発想は、気候変動対策の分野で先行するカーボンクレジットの仕組みを、プラスチック汚染問題に応用したものと位置づけられる。

基本的な仕組み

プロジェクト運営者が「1トンの使用済みプラスチックを適切に回収・リサイクルした」、あるいは「同量のプラスチック使用を回避した」という実績を認証・数値化し、その成果をクレジットとして発行する。企業や団体がこれを購入することで、回収・再利用活動への資金供給が行われる。購入者は、その対価として環境貢献を報告できる仕組みである。主に、廃棄物回収インフラが未整備な途上国において、活動を拡大するための収益モデルとして活用される。

「オフセット」「ニュートラル」との違い

「プラスチック・オフセット(Plastic Offset)」や「プラスチック・ニュートラル(Plastic Neutral)」という表現が使われることがある。これらはクレジット購入者が「自社のプラスチック使用を帳消しにした」と主張するために用いられる場合が多い。しかし、これらは誤解を招きやすく、厳密なクレジット制度とは異なる場合があるため注意が必要である。単なる帳消しではなく、実質的な環境貢献が担保されているかを見極める視点が不可欠である。なお、気候変動分野のカーボンオフセットとは対象物質(プラスチックか温室効果ガスか)が異なる別概念であり、混同しないよう注意したい。

プラスチッククレジットの重要性

背景にある構造的な課題

世界的にプラスチック汚染は深刻化しており、生産されたプラスチックの多くが適切に再利用・回収されず、自然環境へ流出している。特に途上国や新興国では、廃プラスチックの回収・リサイクルインフラが未整備であり、対策に必要な資金が不足しているというギャップが存在する。

公的・私的資金をどのように動員し、廃プラスチック問題へ取り組むかという国際開発およびサステナブルファイナンスの命題に対し、一つの解決策として機能するのがプラスチッククレジットである。

国際社会における役割

プラスチッククレジットは「結果ベースの資金調達(Results-based Financing)」の手法として位置づけられる。回収・再利用・使用回避という具体的な成果に対して資金を動かすことができるためである。

また、途上国においては、インフォーマルセクターを含む雇用創出、地域経済の発展、環境改善という三重のインパクト(コベネフィット)をもたらす可能性がある。これは、社会的な不平等を是正しつつ環境対策を行う「公正な移行」の実現手段となり得ることを意味している。

発行から償却までのプロセス

プラスチッククレジットが発行され、利用されるまでの典型的なプロセスを解説する。

①プロジェクトの設計・登録

まず、廃プラスチックの回収・リサイクル・再利用、または使用回避を実施するプロジェクトが設計される。プロジェクトは適切な標準や手法(メソドロジー)に基づいて登録される必要がある。

②実施・データ収集

プロジェクトが実行され、具体的な実績が生み出される。例えば「河川沿いや海岸で回収したプラスチック量」や「再利用可能資源に変えた量」などが記録される。この段階では、データの正確性とトレーサビリティ(追跡可能性)の確保が重要となる。

③発行・認証・登録

積み上げられた実績に基づき、第三者機関等の認証を経て「プラスチッククレジット」が発行される。これらは識別可能な単位(例:1トン=1クレジット)として登録され、販売可能な状態となる。

④購入と償却(リタイア)

企業などがクレジットを購入する。購入者が「この量のプラスチック回収に貢献した」としてクレジットを償却(リタイアメント、使い切り、市場から無効化すること)することで、自社の環境貢献として報告が可能になる。

⑤モニタリング・報告・検証(MRV

発行・販売されたクレジットの背景にあるデータや実績は、第三者認証機関によるモニタリング・報告・検証(MRV)を経なければならない。二重計上(ダブルカウント)の防止や透明性の確保が、制度への信頼を維持するために不可欠である。

主な活動の種類

プラスチッククレジットの対象となる活動は、主に以下の3つに分類される。

回収・管理型

海岸・河川・海洋に流出する前の「海岸周辺プラスチック(Ocean-bound Plastic)」などを回収する活動。

リサイクル型

回収したプラスチックを再利用可能な素材に変換する活動。

使用回避型

プラスチックの使用自体を削減したり、代替材へ転換したりする活動。

国内外の動向

主要な認証・取引プラットフォーム

プラスチッククレジットの認証・発行・取引は、Verra が運営する「Plastic Waste Reduction Standard(プラスチック廃棄物削減基準)」や、フィリピンを拠点とする PCX(Plastic Credit Exchange)、rePurpose Global、Plastic Bank など、複数の国際的な団体・プラットフォームが担っている。各制度は共通の国際基準に基づいているわけではなく、例えば焼却(エネルギー回収)による処理実績をクレジット化の対象に含めるかどうかなど、団体ごとに考え方が異なる点には留意が必要である。

市場の広がり

プラスチッククレジットの認証制度の多くは2020年代前半に立ち上がったばかりの新しい仕組みであり、市場調査各社は今後も高い成長率で拡大すると予測している。ただし、これらは民間調査会社による将来予測であり、確定した実績値ではない点に注意が必要である。

国際的な政策動向

プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際協定(いわゆる「プラスチック条約」)を策定する国連の交渉プロセスにおいても、プラスチッククレジットを制度的な解決策として位置づけるべきかどうかが論点の一つとなっている。環境NGO等からは、クレジット制度がプラスチック生産量そのものの削減という根本課題に踏み込まず、対策の先送りに使われかねないとの批判も出されている。また、フランスなど一部の国では、科学的根拠を欠く「カーボンニュートラル」等のオフセットに基づく環境訴求表示を規制する法制度の整備が進んでおり、プラスチック分野の環境表示についても同様に透明性が求められる流れにある。

日本国内の動向

日本国内では、プラスチックに特化したクレジット制度はまだ確立されていない。もっとも、プラスチック資源循環促進法に基づく拡大生産者責任(EPR)制度の運用と、プラスチッククレジットのような市場メカニズムをどのように連携させるかについて、シンクタンク等で議論が始まっている段階である。企業にとっては、自社努力だけでは対応しきれない部分を補完する手段として関心が高まりつつある。

制度のメリット

プラスチッククレジットの導入により期待される主なメリットは以下の通りである。

資金動員の促進

途上国や新興国の廃プラスチック対策インフラに対し、民間資金を導入する手段となる。結果に基づいて資金が流れるため、資金効率の面でも有効性が高い。

途上国・地域コミュニティへの便益

インフォーマルな廃棄物回収者や低所得層への雇用創出、地域経済への波及効果が期待できる。環境保全と貧困削減を同時に進めるアプローチとして機能する。

透明性と説明責任の向上

適切に設計された制度下では、回収量や処理量、譲渡状況の追跡が可能である。これにより透明性が高まり、環境・社会インパクトの正確な報告が可能となる。

企業のESG・CSR推進

企業にとっては、サプライチェーン上のプラスチック負荷を可視化し、削減努力を補完する形でサステナビリティへの貢献を示す手段となる。

制度の課題

一方で、プラスチッククレジットには解決すべき課題も残されている。

追加性の証明

「このクレジット制度がなければ、そのプロジェクトは実現しなかった」という「追加性」の証明が難しいケースがある。本来行われるべき活動が単にクレジット化されているだけではないか、という検証が必要である。海外の環境NGO・調査報道からも、稼働から年数が経過した既存プロジェクトが多く含まれ、追加性の立証が不十分ではないかという指摘がなされている。

ガバナンスと標準化の未成熟

定義、方法論、認証基準が統一されておらず、制度によって品質にばらつきがある。これが市場全体の信頼性を揺るがすリスク要因となっている。

グリーンウォッシングのリスク

「クレジットを購入したから、プラスチックを使い続けても問題ない」という誤った認識や宣伝(グリーンウォッシング)につながる懸念がある。特に、使用量の削減(上流対策)よりも、回収・再利用(下流対策)に偏重する恐れが指摘されている。加えて、焼却によるエネルギー回収をクレジット化の対象に含める制度では、焼却に伴う有害物質・温室効果ガスの排出をどう扱うかも論点となっている。

制度的な限界と市場規模

クレジットはあくまで補完的なツールであり、EPR(拡大生産者責任)制度などの包括的な仕組みと併用されるべきである。単独ではプラスチック問題の根本解決には至らない。また、市場規模や流動性が限定的であるため、プロジェクトの収益性が安定しない場合がある。

まとめ

プラスチッククレジットは、プラスチック廃棄・汚染を数値化し、資金動員と結果ベースの活動支援を可能にするツールである。途上国のインフラ整備に資金を誘導し、環境改善と社会貢献を両立させる点で大きな意義を持つ。

しかし、追加性の証明やガバナンスの標準化、グリーンウォッシングの防止など、制度として成熟するためには多くの課題を克服する必要がある。

企業がプラスチッククレジットを活用する際は、まず自社での使用削減や再利用設計(上流対策)を最優先とし、それを補完する手段としてクレジットを位置付けるべきである。また、プロジェクト選定においては、認証基準の厳格さや地域労働者の権利保護など、信頼性が担保されたスキームを選ぶことが肝要である。そうした評価を行う際には、CDR PROのような、サプライヤーやクレジットの品質評価に特化した専門サービスを活用することも有効な選択肢となる。

In English: What Are Plastic Credits?

A plastic credit is a transferable certificate representing a defined quantity of plastic that has been collected, managed, recycled, or whose use has been avoided through a specific project activity — typically measured in units of one metric ton.

Plastic credits emerged as a results-based financing tool for closing the funding gap in waste-collection and recycling infrastructure, particularly in developing countries where such infrastructure is often lacking. The mechanism mirrors carbon credits: a project operator verifies and quantifies plastic collection, recycling, or avoidance, a certifying body issues credits for that outcome, and companies purchase and retire those credits to report environmental contribution. Beyond emissions/waste impact, well-designed projects can also generate co-benefits such as job creation for informal waste workers and local economic development — supporting a “just transition.”

Credit-issuing bodies and marketplaces active in this space include Verra’s Plastic Waste Reduction Standard, the Philippines-based Plastic Credit Exchange (PCX), rePurpose Global, and Plastic Bank, though standards are not yet harmonized — for example, bodies differ on whether energy-recovery incineration counts toward credit generation. The market is young (most standards launched in the early 2020s) and is expected by market researchers to keep growing quickly, though such projections are commercial estimates rather than confirmed figures. Plastic credits are also debated within the UN’s ongoing plastics-treaty negotiation process, and some jurisdictions (e.g., France) are tightening rules on unsubstantiated offset-based environmental claims. In Japan, a dedicated plastic-credit scheme does not yet exist, but think tanks have begun discussing how such market mechanisms might interact with the country’s Extended Producer Responsibility (EPR) framework.

Key criticisms include difficulty proving “additionality” (would the activity have happened anyway?), immature and fragmented governance/standards, and greenwashing risk — particularly the concern that credits favor downstream cleanup over upstream reduction of virgin plastic use. Plastic credits should therefore be treated as a complement to, not a substitute for, upstream reduction efforts and comprehensive policy tools such as EPR.

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。