日本航空株式会社(JAL)グループは2026年4月28日、2025年度のGX(グリーン・トランスフォーメーション)経営目標である「航空機からの実質CO2排出量を2019年度水準(921万トン)未満」を達成したと発表した。
省燃費機材への更新および日々の運航改善に加え、持続可能な航空燃料(SAF)とカーボンクレジットの活用を組み合わせた複合戦略によって目標を達成した形である。同時に、2025年度に全燃料搭載量の1%(約4万キロリットル)をSAFに置き換えるという目標も達成した。
本発表で特筆すべきは、国際民間航空機関(ICAO)が定めるCORSIAの枠組みにおいて、CORSIA適格燃料の調達を2024年度に、CORSIA適格カーボンクレジットの調達・償却を2025年度に開始した点である。
CORSIAは、2019年のCO2排出量の85%を超過した分の削減を国際航空に義務付ける国際スキームであり、削減効果を主張するためには、利用するSAFおよびカーボンクレジットがCORSIA適格である必要がある。JALグループは、世界に先駆けて両者を実運用に組み込んだ事例となる。
JALグループは、2030年度の経営目標である2019年度比10%減(828万トン)の達成に向けて、「2030年度の燃料燃焼によるCO2排出量の5%をSAFによって削減する」という新目標を掲げた。従来の「全燃料に占めるSAFの割合10%」という置換目標は継続する。
同社はバリューチェーン内でのCO2排出量削減を最大限追求しつつ、CORSIA適格カーボンクレジットなどバリューチェーン外での削減にも継続して取り組む姿勢を明確にした。
CORSIA第1フェーズ(2024〜2026年)は加盟国の自主参加方式で運用されているが、2027年からの第2フェーズでは原則すべての国際航空便に義務適用される。
CORSIA適格カーボンクレジットは、ICVCMのコアカーボン原則(CCPs)と並び、ボランタリーカーボンクレジット市場における品質ベンチマークの一つとして認識されつつあり、追加性・永続性・測定・報告・検証(MRV)の各観点で厳格な要件が課される。
ICAOが現時点で承認しているCORSIA適格プログラムは、ベラ(Verra)、ゴールドスタンダード(Gold Standard)、アメリカン・カーボン・レジストリ(ACR)、クライメート・アクション・リザーブ(CAR)、アーキテクチャー・フォー・REDD+トランザクションズ(ART)など限定的であり、各レジストリ内でも対象方法論・ヴィンテージ年が制限されている。
このため、CORSIA適格カーボンクレジットの実需は2027年の義務化を見据えて急速に拡大することが見込まれており、価格面でも一般のボランタリーカーボンクレジットと差別化された推移が予想される。
現時点でCORSIA適格カーボンクレジットの大半は、REDD+などの森林由来の回避系カーボンクレジットや再生可能エネルギー由来の削減系カーボンクレジットで構成されている。
一方、ICAOは2024年以降、炭素除去(CDR)由来のカーボンクレジット、特にバイオ炭、植林(ARR)、直接空気回収・貯留(DACCS)、バイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)などをCORSIA適格プログラムの方法論候補として継続的に評価している。
航空業界はハード・トゥ・アベイト・セクターの典型であり、SAFによる根本的な排出削減と、残余排出量に対するCDRクレジットの活用というハイブリッド戦略が、長期的な実質ネットゼロ達成の鍵となる。
JALグループの今回の発表は、国内航空会社として初めてCORSIA適格カーボンクレジットの償却に着手した実例として、日本企業のCORSIA対応の標準モデルを提示するものである。とりわけ、CORSIA第2フェーズの義務化を2027年に控える中、ANAなど競合各社のオフセット戦略と比較するベンチマークとなる点で意義は大きい。