日本郵船(NYK)は、米国の炭素除去スタートアップであるグラファイト(Graphyte)から、CDRクレジットを長期購入する契約を締結した。
対象は、同社がアーカンソー州で進めるLoblollyプロジェクトが創出する、バイオマス由来の耐久性CDRクレジットである。
海運の残余排出をCDRで相殺
日本郵船はLNG、アンモニア、メタノールといった次世代燃料への転換や省エネを進めている。一方で、海運業には避けがたい残余排出が残るとし、これをCDRクレジットで相殺することでCO2排出のネットゼロを目指すとしている。
日本郵船は2025年に公表したポジションペーパーで、CDRをScope1排出の削減手段と位置づけている。
今回の購入は、その方針に沿った具体的な調達と位置づけられる。
グラファイトの技術と商業需要
グラファイトのCarbon Casting技術は、農業や林業、木材加工で生じるバイオマス残渣を乾燥・圧縮して固形化し、地中に貯留する。同社はこの手法で1,000年を超える炭素の固定が可能とし、低コストかつ拡張性の高いCDR経路と位置づける。創出されるクレジットは、独立した第三者によるMRVを経て認証される。
Loblolly施設はすでに15,000トンを超えるCDRクレジットを発行済みで、拡張により年産能力を50,000トン規模へ引き上げる計画だ。
商業面では、同社はJPモルガン・チェース(JPMorganChase)と60,000トン・10年のCDRクレジット契約を結んでいるほか、ビル・ゲイツ(Bill Gates)が設立した気候投資ファンドのブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(Breakthrough Energy Ventures)からの支援も受けている。なお、今回の発表では住友商事によるLoblollyプロジェクトへの出資も併せて明らかにされた。
関連記事:住友商事、Graphyteとの合弁でCDRクレジット事業に参入
編集部の視点
本件は、難脱炭素分野の事業者が耐久性CDRを残余排出対策に組み込む動きの一例として位置づけられる。
注目すべきは、海運という重排出産業の日本企業が、長期固定型のCDRを残余排出対策の選択肢としている点である。アジアの産業プレーヤーによる高永続性CDRへの需要が、この領域の供給拡大とクレジット価格の方向性を左右する。
