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欧州議会、大型トラックのCO2規制に柔軟措置を可決 2025〜2029年の排出枠バンキング制度が始動

2026.03.15 読了 約3分
欧州議会、大型トラックのCO2規制に柔軟措置を可決 2025〜2029年の排出枠バンキング制度が始動
出典:EPP Group in the European Parliament

欧州議会は2026年3月12日、大型商用車(重量物輸送車両)メーカーを対象とするCO2排出規制について、達成方式に柔軟性を付与する改正案を賛成473票・反対81票・棄権9票という明確な多数で可決した。

ゼロエミッション・トラック市場の普及が当初想定を下回るなか、業界からの強い要請に応じた措置であり、2030年の目標値そのものは維持しつつ、達成の時間的余裕を拡大する。

排出枠の「バンキング」制度

今回の改正の実質的な内容は、2025〜2029年の報告期間において目標を上回る実績を達成したメーカーが、超過分の排出枠を翌期以降に繰り越せる(バンキング)仕組みの導入である。従来の規制では各年の厳格な軌道に沿った削減が求められていたが、改正後はゼロエミッション車の販売が好調な年の余剰実績を蓄積し、2030年の最終基準年に充当することが可能になる。

欧州人民党グループ(EPP)は委員会提案を無修正支持の立場で本件を推進。同グループの運輸・観光委員会スポークスマンであるイェンス・ギーセケ(Jens Gieseke)欧州議会議員は採決後、「中国や米国のメーカーが同等の規制圧力を受けない状況下で、欧州メーカーだけに罰金を科すことは、気候変動対策ではなく欧州の雇用と産業競争力の破壊に他ならない」と述べた。また、ギーセケは「本改正はあくまで出発点に過ぎず、2026年中に重量物輸送車両規制全体の抜本的改定が必要だ」と追加措置を要求している。

規制の枠組みと今後の手続き

現行の重量物輸送車両CO2規制は、フリート平均排出量の2030年までに45%削減(2019年比)を義務付けている(当初は30%だったが上方修正済み)。今回の改正はこの目標数値を変更するものではなく、達成手段の柔軟化に限定されている。都市バスは制度変更の対象から明示的に除外されており、2030年までの新造都市バス100%ゼロエミッション化という目標は温存された。

手続き面では、欧州議会の可決後にEU加盟国閣僚理事会の正式承認が必要であるが、理事会はすでに提案への支持を表明しており、発効は近い見通しである。欧州議会が「緊急手続き」を適用して審議を加速させた点は、業界への即応姿勢を示す政治的シグナルとして注目される。

気候政策上の論点

今回の措置に対しては、EU2050年カーボンニュートラル目標との整合性を損なうとの批判も存在する。規制の柔軟化は短期的な産業保護には資するが、ゼロエミッション技術への投資インセンティブを弱める恐れがある点は否定できない。一方、支持派は「現行規制はゼロエミッション・トラクターの市場浸透率と充電インフラ整備の遅れを反映しておらず、実態と乖離した達成軌道を強制することは非合理だ」と主張している。

欧州の重量物輸送車両CO2規制における排出枠バンキング制度の導入は、欧州市場に展開する日系トラックメーカーにとっても直接的な競争条件の変化を意味する。

また、国内ではGX-ETSの本格稼働に向けた制度設計議論が続くなか、EU規制における「目標維持・手段柔軟化」の二段構えのアプローチは、日本の産業脱炭素政策に対しても参照すべき設計思想を提供している。

達成方式の柔軟性が投資判断を促進するか抑制するかという問いは、GX-ETS第2フェーズの排出枠配分設計においても同様に問われる論点である。

参考:https://www.eppgroup.eu/newsroom/meet-truck-co2-targets-without-punishing-manufacturers#:~:text=10.03.2026%2013:16,the%202025%2D2029%20reporting%20periods.

関連タグ 欧州
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。