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コンゴ民主共和国がBURNにパリ協定6条LoAを発出、CORSIA供給網にアフリカ初のハブ国家が加わる

2026.05.09 読了 約6分
コンゴ民主共和国がBURNにパリ協定6条LoAを発出、CORSIA供給網にアフリカ初のハブ国家が加わる
出典:BURN

コンゴ民主共和国の環境・持続可能な開発・新気候経済省は、アフリカ最大のクリーンクッキング企業であるバーン(BURN)に対し、同国初のパリ協定6条に基づく承認書(Letter of Authorization、LoA)を発出した。

これにより、バーンとパートナー企業はCORSIA向けに93万トンのカーボンクレジットを国際移転することが可能となる。コンゴ盆地という気候戦略上の要衝が6条市場と接続された意義は、規模そのものを超える構造的転換点として読み解く必要がある。パートナーには、バーンとロンドン拠点のキーカーボン(Key Carbon)が50対50で出資するグローバル・クックストーブス(Global Cookstoves Ltd)が含まれる。

ナイジェリアに続くアフリカ6条実装の加速

コンゴのLoA発出は、2026年3月にナイジェリアが520万トン規模のCORSIA向けLoAをバーンに発出したのに続く動きである。両国とも、6条2項に基づくITMOをCORSIA適格排出ユニット(EEU)に転換するパイプラインの構築を選択した。

特筆すべきは、コンゴが世界の森林炭素ストックの約8%を保有する炭素大国であるという文脈である。マリー・ニャンゲ・ンダンボ(Marie Nyange Ndambo)環境大臣は、6条キャパシティビルディングワークショップにおいて、同省がカーボンクレジット市場の整備を積極的に進めており、バーンを政府の戦略的パートナーと位置づける旨を表明した。

ナイジェリア(西アフリカの人口大国)に続くコンゴ(中部アフリカの森林大国)の参入は、地理的にも炭素ストックの観点からもアフリカ大陸の主要セグメントが6条市場と接続されつつあることを示している。グリーン製造業ハブと気候ファイナンス受け入れ拠点としての国家ポジショニングを、両国が制度整備を通じて進めている構図といえる。

CORSIA供給ギャップと93万トンの戦略的位置づけ

本件の市場インパクトは、CORSIAフェーズ1の供給ギャップに照らして読み解く必要がある。

航空業界は2026年時点で1億4,600万〜2億3,600万トン規模の適格カーボンクレジットを必要とするとされる一方、6条2項に基づくLoAを発出済みのホスト国は依然として限定的である。バーンの場合、ナイジェリア(520万トン)に続く形で本件コンゴの93万トンが加わり、累計で約613万トンのCORSIA向け供給ポジションを確立した。

単一プロジェクト群としては大規模だが、CORSIA全体需要に対しては依然として限定的である。重要なのは数量そのものより、アフリカ系クックストーブ事業者が6条市場の主要サプライヤーとして台頭しつつある構造である。供給国が広がることで、航空各社の調達ポートフォリオの分散化、ITMO化を経由した品質保証の強化という二つの効果が同時に進む。

一方で、クックストーブ系カーボンクレジットには、削減量の過大計上や方法論の妥当性をめぐる指摘が継続的に存在してきた点には留意が必要である。これに対し、6条2項に基づくITMO化と国家による公式認証は、ボランタリーカーボンクレジット市場で繰り返されてきた品質懸念に対するガバナンス上の応答として機能する。CORSIA適格化のハードルがITMO化を経由することで一段引き上げられる構造となっており、市場側からは品質ベンチマークとしての機能が期待されている。

コベネフィットと途上国支援の文脈

コンゴではいまだ人口の約90%が薪や木炭などの伝統的バイオマスを調理に使用していると言われており、森林破壊、室内空気汚染、温室効果ガス(GHG)排出の主要因となっている。首都キンシャサ単独で、年間500万立方メートルの薪が調理に消費され、これは540万トンのCO2排出に相当する。

バーンは2017年のコンゴ事業開始以降、累計1,800万ドル(約28億2,000万円)を同国に投資し、約40万台の高効率クックストーブを配布した。炭素金融の活用により、ストーブ価格の60〜100%を補助し、本来50ドル(約7,800円)相当のストーブを最低10ドル(約1,600円)で家計に届けるモデルを構築している。

国際カーボンクレジット市場における買い手は、近年、削減量そのものに加え、コベネフィット(健康改善、ジェンダー、雇用創出、生物多様性等)の評価軸を強化している。CORSIA適格カーボンクレジットの調達においても、航空各社のESG投資家・規制当局からの説明責任が高まる中、コベネフィットの厚みが調達判断に影響する局面が広がっている。

クックストーブ事業は、この点で構造的に優位性を持つ。室内空気汚染による健康被害の低減、調理時間の解放によるジェンダー便益、現地雇用創出、森林保全といった複層的コベネフィットを内包する。バーンはLoA発出に併せ、コンゴ国内に新たな製造施設を立ち上げる方針も公表した。現地生産能力の確保、グリーン雇用、技術移転を伴うものであり、ホスト国にとっての気候ファイナンス受け入れの実体的な果実が、雇用と産業基盤の形で残る設計となっている。途上国支援としての気候ファイナンス実装と、買い手側の調達説明責任を同時に満たす構造を備えている点に、本モデルの戦略的意義がある。

コンゴ盆地保全とバーンの事業基盤

コンゴ盆地は南米アマゾンに次ぐ世界第2位の熱帯林であり、年間15億トンを超えるCO2を吸収する重要な炭素シンクである。同地域の森林劣化は、非公式な木炭生産が主要因の一つとして指摘されてきた。

バーン創業者兼CEOのピーター・スコット(Peter Scott)氏は、1990年代にコンゴ盆地で木炭生産による森林破壊を目撃したことが、燃料効率の高いクックストーブを開発する動機となったと述べている。本件LoAは、創業の原点であるコンゴ盆地で同社が6条市場を通じて事業をスケールさせる転換点となる。

コンゴのLoA発出は、規模(93万トン)よりも6条市場におけるアフリカハブ化の構造的転換点として評価すべき事案である。CORSIAフェーズ1の供給ギャップが顕在化する局面で、世界森林炭素の約8%を擁するコンゴが国際カーボンクレジット供給網に組み込まれた意義は大きい。

注目すべきは、買い手の関心が削減量単体からコベネフィットを含む統合価値に移行する潮流と、本件のクックストーブモデルが示す途上国支援の実体(雇用創出・健康改善・森林保全)が高い親和性を持つ点である。

参考:https://www.burnstoves.com/media/newsroom/newsroom-16

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。