カリフォルニア州議会上院で2026年3月、データセンターの系統連系にゼロカーボン電力と蓄電池の組み合わせを事実上義務付ける2本の法案が、それぞれの委員会を通過した。
急拡大するAI向けデータセンター需要が既存の送配電網に与える負荷と、その費用を一般消費者に転嫁させないための措置として注目が集まっている。
今回の立法パッケージの中核を成すのが、スティーブ・パディーリャ(Steve Padilla)上院議員(民主党・サンディエゴ選出)が提出したSB 886とSB 887の2法案である。
SB 886(カリフォルニア技術革新・電力消費者保護法)は、25メガワット以上の大規模電力需要プロジェクトに対し、時間ごとの電力消費の少なくとも50%をゼロカーボンかつディスパッチャブル(出力制御可能)な電力で賄うことを義務付ける。この契約は15年間の長期コミットメントが求められ、早期解約には罰則が科される。さらに、系統接続に必要な送配電インフラの増強費用は、プロジェクト開発者が全額負担するよう義務付け、一般の電力利用者への費用転嫁を明示的に禁止する。
SB 887は、データセンターが環境リーダーシップ開発プロジェクト(ELDP)認定。迅速な環境審査を可能にする優遇制度を取得するための条件として、ピーク需要の100%に相当する容量で4時間以上の蓄電能力を持つゼロカーボン電源の設置を要求する。
カリフォルニア州の現在のエネルギー構成において、50%以上のゼロカーボン電力を単独の再生可能エネルギー発電で24時間365日確保することは技術的・経済的に困難である。太陽光発電は夜間に発電できず、完全なクリーン電力の調達オプションは限定的かつ高コストである。その結果、太陽光や風力と蓄電池を組み合わせるハイブリッドシステムが、最も現実的なコンプライアンス経路として浮上する。
蓄電池には追加的なメリットもある。需要プロファイルの平準化と負荷シフトにより、系統制限内での運用が容易になり、系統連系の審査期間を短縮できる可能性がある。また、送電制約のある地域では、開発者が全額負担を求められる高コストな送電網増強の必要性を低減できる。
さらにSB 886は、カリフォルニア公益事業委員会(California Public Utilities Commission)が監督するデマンドレスポンス(需要応答)プログラムへの参加も義務付けており、データセンターを電力系統の需給調整リソースとして活用する設計になっている。
この立法の直接的な引き金となったのが、AI関連インフラ投資の急拡大である。パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック(Pacific Gas & Electric、以下PG&E)が2023年から2025年にかけて受理したデータセンターからの系統連系申請は合計10ギガワット超に達し、これは同州ディアブロキャニオン原子力発電所の約4倍の容量に相当する。
市民監視機関のリトルフーバー委員会(Little Hoover Commission)は、新たな規制なくしては一般家庭が大規模な系統増強費用を負担することになると警告しており、消費者団体のターン(TURN)(The Utility Reform Network)と環境団体のネットゼロカリフォルニア(Net-Zero California)が法案を共同提案している。
直近の立法状況は以下の通りである。
同様の動きは他州にも波及しており、オハイオ州の電力規制機関はデータセンターに対し初期インフラ費用の増額負担を命じた。バージニア州・ニュージャージー州の新知事もデータセンターへの「応分の費用負担」を求める方針を打ち出している。
カリフォルニア州のSB 886・SB 887は、単なる消費者保護立法ではなく、大規模電力需要者に対してゼロカーボン電力調達をハード義務として課す新たなカーボンプライシングの実験例として読み解くべきである。
蓄電池とPPA(電力購入契約)の組み合わせによるScope 2排出量の削減戦略が、日本国内でも早期に事業競争力の前提条件となり得ることを念頭に置くべきであろう。
参考:https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billTextClient.xhtml?bill_id=202120220SB887