ワシントン州は6月25日、カリフォルニア州およびカナダのケベック州とカーボン市場の連結協定に署名する。3管轄は2027年に統合市場の運用を開始する見通しで、ワシントン州のキャップアンドインベスト(Cap-and-Invest)は、準国家レベルで世界最大とされるカリフォルニア・ケベック市場に加わる。
連結後は、3管轄が共通の排出枠価格のもとで合同オークションを実施し、各管轄の対象事業者は管轄をまたいで排出枠を取引し、償却できる。市場規模が拡大すれば価格変動は抑えられ、対象事業者は排出削減投資の判断を下しやすくなるとされる。
ワシントン州のキャップアンドインベストは、2021年成立の気候コミットメント法(CCA)に基づく制度で、米国では2例目にあたる。CCAは他市場との連結を積極的に検討するようエコロジー局(Department of Ecology)に求めており、3年を超える分析と意見聴取を経て、カリフォルニア・ケベック市場との連結が決まった。
本件の実体は、署名そのものよりも制度調和の作業にある。
エコロジー局は6月1日、連結を円滑にするための規則改正案を公表した。排出枠の提出期限を3管轄で揃えるといった技術的調整が柱で、意見公募は7月17日まで行われる。カリフォルニア州とケベック州も、それぞれの手続きと規則改正を並行して進めている。
連結はCCAの環境正義要件の枠内で設計される。州はキャップアンドインベスト収入の35%以上を脆弱なコミュニティに振り向け、地域の大気質格差への対応を続ける。オフセットクレジットの使用制限も連結後に維持される。エコロジー局は、連結によって州の排出削減目標の達成は損なわれず、対象事業者の遵守コストは下がるとの評価を示している。
本件は北米コンプライアンス市場の構造転換というより、2014年に連結したカリフォルニア・ケベック市場、すなわちWCI(Western Climate Initiative)の枠組みへの3管轄目の編入として位置づけられる。
参照価値は、準国家の制度が単発の合意ではなく数年単位の規則調和を積み上げ、段階的に市場を広げる経路を具体的に示した点にある。連結後もオフセットクレジットの使用制限を保つ設計は、市場が拡大局面に入ってもカーボンクレジットの受け入れ範囲をむしろ絞り込む選択がありうることを示している。
参考:https://ecology.wa.gov/air-climate/climate-commitment-act/cap-and-invest/linkage