インドネシアの保全コンセッションを運営するカヤン・プロジェクトは6月23日、北/東カリマンタンの熱帯林、泥炭地、マングローブからなる868万ヘクタールの保全権益を直接トークン化し、2026年8月に自然資本とRWA専用の新設取引所へ上場する計画を明らかにした。
ネイティブトークンのカヤントークン($KYN)を発行し、あわせてコンセッションの環境アウトプットを表象するコモディティトークンを順次発行する。初期対象は、長期固定型の除去系カーボンクレジット、生物多様性クレジット、マングローブ由来のブルーカーボンクレジットである。各トークンはカヤン自然資本プロトコルの検証フレームワークを通じて個別に検証されるとしている。
保全コンセッションは60年間の事業協定下にあり、アセント・パートナーズ(Ascent Partners)による暫定評価を受けている。これまで同規模の自然資本資産は一部の政府系および法人バイヤーに限られてきたが、本件は適格投資家がフラクショナルに直接アクセスできる設計だとカヤンは説明する。
dMRVには、2023年からインドネシアで展開してきたヴィア(Veea)の「AIoT of Forest」を採用する。エッジAI、衛星および地上通信、広域メッシュネットワークを組み合わせ、生物多様性指標、炭素ストック、環境条件を連続的にモニタリングし、対象エリアのデジタルツインを生成するとしている。
上場先となる取引所は自然資本とRWA市場向けに新設されたものとされるが、名称、インフラパートナー、立ち上げの詳細は8月の上場に向けて順次開示するとしており、現時点では明らかにされていない。
資金調達は現在プライベートプレースメント段階にある。米国証券法のRegulation Sに基づき、米国外の適格投資家および機関投資家に限定したSAFTを通じて調達する。発行体はSTO発行体のカヤン・ホールディングスで、KYC/AMLとReg Sの譲渡制限を課す設計である。
本件の核心は、規模と裏付けの距離にある。
発表には、認証機関、方法論、レジストリのいずれについても記載がない。除去系カーボンクレジットは長期固定の大きなポテンシャルがあると表現されるにとどまり、品質を裏付ける具体的な枠組みは示されていない。プロジェクト側は連続的なdMRVが透明性とインテグリティを強化すると説明するが、これはモニタリングの粒度に関する主張であり、カーボンクレジットの認証体制そのものを示すものではない。
カヤンのトークン化は、流通の器が原資産の品質検証に先行している点に特徴がある。868万ヘクタールという規模は破格だが、それを裏付ける認証機関、方法論、永続性の担保は現時点で提示されていない。トークン化やRWAという流通スキームは、原資産たるカーボンクレジットの品質が確立して初めて成立する。
カリマンタンの森林由来カーボンクレジットは、ベースライン設定や追加性をめぐる過去のインテグリティ問題と切り離せない。dMRVは炭素ストックや生物多様性の監視粒度を高めるが、何をベースラインとし、どの方法論で追加性と永続性を立証するかを決めるのは、モニタリング技術ではなく認証体制である。本件が機関投資家グレードを名乗るのであれば、問われるのは取引所インフラの先進性よりも、上場までに認証とレジストリの裏付けをどこまで開示できるかとなる。