英テック業界団体のtechUKが、英国内のネイチャー回復事業に資金を振り向けるファンド「National Nature Fund」を設立した。環境プラットフォームのエコロジー(Ecologi)と組み、会員企業が事前審査済みの自然再生プロジェクトに共同出資できる仕組みを用意する。年間560万ポンド(約12億円)の調達を目標に掲げる。
techUKは本ファンドを、カーボンオフセットの手段でも、その代替でもないと明確に位置づけている。企業が生物多様性への投資に踏み出すための入り口とする。
対象は英国内のプロジェクトに限定する。植林、泥炭地の再生、野草地、海草藻場の回復などが含まれる。各事業はエコロジーの審査枠組み(Nature Project Assessment Framework、NPAF)を通じて個別に評価され、デューデリジェンスと成果の測定可能性が確認される。techUKの会員は1,100社を超え、いずれも審査済みのポートフォリオにアクセスできる。
調達目標の560万ポンドは、英国が年間で必要とするネイチャーファイナンス(約560億ポンド、約12兆円)の0.1%にあたる。2030年までに陸と海の30%を保護・回復する「30by30」目標への貢献分と説明する。
techUKがテック業界を拠出主体に据える理由として、自然への依存と影響を測る指標がまだ発展途上にある点を挙げる。カーボン算定の手法が確立されている一方で、生物多様性の評価基準は整備の途上にある。データ収集や分析を担うツールの多くがデジタル技術であることから、テック企業の資金と技術の双方を自然再生に向けられるとする。
クレイグ・メルソン(Craig Melson)気候・環境・サステナビリティ担当アソシエイトディレクターは、本ファンドを企業が連携して行動するための出発点と述べた。
本件の要点は、ファンドをカーボンクレジット市場の外側に置いた点にある。
techUKはオフセットでも代替でもないと繰り返し、生物多様性への拠出をカーボンクレジットの購入とは別の資金チャネルとして提示した。ネイチャーポジティブに向けた企業資金が、カーボンクレジット市場とは独立した枠組みで動き始めた一例として位置づけられる。年560万ポンドという規模は必要額の0.1%にとどまり、象徴的な水準にすぎない。それでも、生物多様性向けの拠出をオフセットの会計処理から切り離す建て付けは、両者を別個の市場として扱う流れに沿う。
参考:https://www.techuk.org/resource/techuk-s-national-nature-fund.html