豪クリーンテック企業のエムシーアイ・カーボン(MCi Carbon)が、産業排出源から回収したCO2と鉱物系の産業廃棄物を建材原料に転換する施設マートル(Myrtle)を、ニューカッスルで稼働させた。鉱物炭酸化技術により、年間2,500トンのCO2を処理し、10,000トンの販売可能な材料を産出する。
マートルは、オリカ(Orica)のアンモニアプラントに併設され、同プラントの排出源から供給されるCO2を原料とする。回収したCO2を鉄鋼スラグや廃石などのアルカリ性原料と反応させ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、非晶質シリカへと転換する。これらは低炭素コンクリートやセメント、塗料、プラスチック向けの材料として供給される。
地中貯留を行う従来型の炭素回収・貯留(CCS)と異なり、CO2は分子レベルで固体鉱物に固定され、漏出リスクを排除する。永続性の高い固定形態である点が特徴となる。
同社はマートルを世界初の産業用カーボンリファイナリーと位置づけるが、年間2,500トンという処理規模は実証段階にとどまる。
マートルは、商業展開に向けた検証拠点として機能する。欧州の耐火物大手アールエイチアイ・マグネシタ(RHI Magnesita)は商業顧客として1,000万ドル(約16億円)を出資し、検証キャンペーンに参加する。同社は2030年までにオーストリアで初の商業プラント建設を目指しており、年間最大50,000トンのCO2固定を想定する。
エムシーアイ・カーボンの事業モデルは、CO2を貯留すべき負債ではなく、収益を生む製品原料として扱う点に特徴がある。炭素を埋め込んだ建材市場が2050年までに年間1兆ドル(約161兆円)規模に達するとの市場予測を背景に、脱炭素をコスト要因から収益機会へと転換する構図を描く。
本件は炭素除去(CDR)ではなく、点源CO2の回収・利用(CCU)に鉱物固定を組み合わせた事例であり、カーボンクレジット収益に依存しない事業モデルとして評価できる。実証段階ながら、製品収益で脱炭素を成立させる構図は、削減困難産業にとって一つの選択肢を示す。
日本ではすでに三菱UBEセメント(MUCC)が500万ドル(約8億円)を投じ、自国の重工業への展開可能性を探っている。セメントや鉄鋼など日系の排出削減困難産業はCO2の出口を模索しており、地中貯留の適地が限られる国内事情を踏まえれば、回収したCO2を製品へ固定する手法の実用性が今後の論点となる。
参考:https://www.netzero.gov.au/meet-mci-carbon-turning-industrial-emissions-secure-jobs-hunter