ベラ(Verra)は6月18日、停止していたケニア北部の草地土壌カーボンクレジット案件「Northern Kenya Grassland Carbon Project(Verra Project 1468)」について停止を解除し、登録簿上で稼働中の状態に戻したと発表した。運営主体ノーザン・レンジランズ・トラスト(Northern Rangelands Trust、NRT)が住民ガバナンスと同意手続きを再構築し、独立した検証機関(VVB)の評価を通過したことによる。
ただし、停止の発端となった土地の所有権をめぐる法的係争は、控訴審が継続している。
案件が品質管理レビュー(QCR)下に置かれた起点は、2025年1月のケニア裁判所判決である。判決は、案件の中核エリアを運営するビリコ・ブレサ・コンサーバンシー(Biliqo Bulesa Conservancy)が、未登録のコミュニティ土地上で必要な法的・住民手続きを経ずに設立されたと認定した。
これによりベラの所有権要件への不適合が生じ、カーボンクレジットの発行が止まった。
NRTと関係するコンサーバンシーは判決を不服として控訴し、判決の執行を止める差止命令を取得した。これにより、係争中もコンサーバンシーは操業を継続できる状態にある。
VCSおよびCCB基準への適合を示すため、NRTはケニアの「Community Land Act(コミュニティ土地法)」に基づき、住民の自由意思による事前同意(FPIC)とガバナンス体制を独立評価付きで再構築する必要があった。
対象地を管理するチャリ・デダ・コミュニティ(Chari Dedha Community)は、コミュニティ登録、選挙によるガバナンス構造の確立、300回を超える協議を経て、約1,500名が参加する批准投票を実施し、案件への参加と支持を確認した。
VVBは、案件と利害関係のない住民や市民社会組織、研究者への聞き取りを含めて手続きを独立に評価し、ベラの要件を満たすと結論づけた。ベラはこれを受理して復帰を決定した。今後の検証でも、継続中の法的手続きの帰結への適合状況を確認するとしている。
案件の移行委員会で議長を務めるピーター・レクルトゥット(Peter Lekurtut)は、レビュー期間が同意手続きと苦情処理の仕組みを強化し、住民便益の確保につながったと述べた。
今回の復帰は、ベラの是正運用に沿って住民同意とガバナンスの手続きを完了させた前進ではある。もっとも、停止を招いた土地権の構造問題そのものが解決したわけではない。
案件は控訴審の判決ではなく差止命令を根拠に操業を再開しており、カーボンクレジットの発行は係争の帰結という不確定要因の上に立つ。ベラ自身が今後も法的手続きの帰結への適合を確認すると明言している点は、その不確実性の裏返しである。土地権をめぐる係争が長期化、あるいは逆転すれば、発行済みおよび今後発行分のカーボンクレジットのパーマネンスと正当性が再び問われうる。買い手の評価は、復帰の事実よりも係争の帰結が左右することになる。
参考:https://verra.org/verra-reinstates-northern-kenya-grasslands-carbon-project-following-community-ratification-process/