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メキシコ砂漠地帯の牧畜民にカーボンクレジット収益が直接還元 ブーミトラの草地再生プロジェクト、300万トン発行で経済循環が始動

2026.04.30 読了 約4分
メキシコ砂漠地帯の牧畜民にカーボンクレジット収益が直接還元 ブーミトラの草地再生プロジェクト、300万トン発行で経済循環が始動
出典:https://boomitra.com/northern-mexico-rancher-payments/

カーボンクレジット創出事業者のブーミトラ(Boomitra)は2026年4月22日、メキシコ北部のチワワ砂漠およびソノラ砂漠で展開する草地再生プロジェクトから創出されたカーボンクレジットの販売収益を、参加牧畜民へ直接還元する支払いを開始したと発表した。

本プロジェクトは2026年2月、ベラ(Verra)から303万トン分のカーボンクレジットの発行認証を受けており、今回の支払いはその売却益が原資となる。

プロジェクトの規模と参加体制

対象地域は、メキシコ北部のエヒード(共有地牧場)および私有牧場を含む計約400万エーカー(約162万ヘクタール)の砂漠草原に及び、158世帯の牧畜家庭が参加している。これらの牧畜民は、輪換放牧を中心とする再生型土地管理手法を長年にわたり実践してきた。

ブーミトラが採用する「生産者優先(プロデューサー・ファースト)」モデルは、カーボンクレジット販売の粗収益の少なくとも75%を、参加牧畜民および現地実施パートナーへ配分する設計である。これは、ボランタリーカーボンクレジット市場で度々批判される「現地還元率の不透明性」に対する明確な応答であり、近年の高インテグリティ志向とも整合する。

需要側プレーヤーとCDR文脈

本プロジェクトのカーボンクレジットの買い手には、デロイトNSE(Deloitte NSE)、イーサリアム・クライメート・プラットフォーム(Ethereum Climate Platform)、レストレーション・クライメート(Restoration Climate)が名を連ねる。これらの企業の購買が、検証済みの炭素除去(CDR)成果を、地域コミュニティへの直接的な経済還元へと転換する需要基盤を形成した。

本プロジェクトは、草地土壌への炭素隔離を中核とする自然に基づく解決策(NbS)型の除去系カーボンクレジット創出事業に位置づけられる。輪換放牧による植生回復と土壌有機炭素の蓄積を、方法論の中核として組み込んでいる。

生物多様性、定量化されたコベネフィット

本プロジェクトの生物多様性評価では、植物281種・動物436種が確認され、うち41種が希少種・絶滅危惧種・脆弱種に分類された。対象地域は、ハノス(Janos)、マピミ(Mapímí)、クアトロシエネガス(Cuatro Ciénegas)、ビッグベンド(Big Bend)という北米屈指の保護区4か所を結ぶ越境型野生生物回廊の一部を成す。

具体的な回復指標としては、ポソ・カリエンテ牧場におけるアプロマドハヤブサの繁殖つがいの再確認、クエンカ・デ・ロス・オホスでのジャガーおよびオセロットの記録、そして従来型放牧で在来牧草が1種にまで減少していた牧場における60種以上の在来牧草の回復が報告されている。

経営層・参加者のコメント

ブーミトラ創業者兼最高経営責任者(CEO)のアーディス・ムールティ(Aadith Moorthy)氏は「今回発行されたカーボンクレジットの一つひとつの背後には、家族の生計を支える生態系を回復させるため、何年にもわたる忍耐強い取り組みを続けてきた牧畜民がいる。今回の支払いは、こうした土地管理責任と、本プロジェクトを当初から導いてきた科学的根拠と信頼への、有意義な対価である」と述べた。

参加牧畜民のひとり、エヒード・アセブチェスのエヒダタリオであるエリベルト(Heriberto)氏は「カーボンプロジェクトのおかげで、電気柵、給餌器、改良型畜舎など、牧場経営の質を高めるインフラへの投資資金が確保できる」とコメントしている。

本事案は日本企業にとって二つの示唆を持つ。

第一に、収益の75%以上を現地生産者へ還元するモデルは、グリーンウォッシング批判に対する構造的な防衛線として機能する。日本の商社・金融機関・事業会社がボランタリーカーボンクレジット市場でNbS由来の自然由来カーボンクレジットを調達する際、コアカーボン原則(CCPs)への適合性に加えて、収益分配の透明性が事実上の選定基準として浮上しつつある。

第二に、本プロジェクトは追加性・永続性・コベネフィットというCCPsの三要件のうち、コベネフィットを植物281種・動物436種という具体的データで定量提示している点で先進的である。

中南米NbS案件への参画を検討する日本企業にとって、第三者検証可能な共便益指標の確保は、買い手側のレピュテーション管理および将来的なSBTi FLAG(土地・森林・農業セクター指針)対応の観点から、不可欠の要素となる。

参考:https://boomitra.com/northern-mexico-rancher-payments/

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カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。