米国環境保護庁(EPA)リージョン7は2026年4月10日、ピュアフィールド・カーボンキャプチャー(PureField Carbon Capture)に対し、地下注入規制(UIC)プログラムにおけるクラスVI井戸の最終許可を発行した。
本件は、カンザス州およびリージョン7(カンザス、ミズーリ、アイオワ、ネブラスカの中西部4州)における初のクラスVI井戸認可となる。エタノール製造工程で副生される高純度CO2を深部地層に長期貯留する炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトとして、米国中部における炭素管理インフラ整備の節目となる動きである。
許可を受けたピュアフィールドの施設は、カンザス州ラッセル近郊に立地する。プロジェクトでは、エタノール発酵工程で副生されるCO2を回収し、地下深部の塩水帯水層であるアーバックル層(Arbuckle formation)に圧入する。注入深度は地表下3,448~3,606フィート(約1,051~1,099メートル)に設定された。
許可された注入期間は12年間で、年間最大150,000トンのCO2を注入できる。期間全体での累計注入可能量は1,800,000トンに達する。EPAリージョン7のジム・メイシー(Jim Macy)長官は「本許可は、国内エネルギー生産と『米国エネルギー優位(American Energy Dominance)』の推進に対するEPAの支持を示すものだ」と述べ、農村部経済の活性化と環境保護の両立を強調した。署名式にはピュアフィールドの最高経営責任者(CEO)アーロン・ビュートナー(Aaron Buettner)も同席している。
クラスVI井戸は、CO2を深部岩層に長期貯留する目的で設計された特別な許可カテゴリーであり、米国では安全飲料水法(Safe Drinking Water Act)に基づきEPAが地下飲料水源の保護を所管する。許可判断は、サイト固有の地質評価を踏まえて個別に行われる。
ピュアフィールドは、12年の注入期間を通じて井戸および注入帯上部における継続的な測定・報告・検証(MRV)を実施する義務を負う。さらに注入終了後も50年間にわたって監視を継続する必要がある。これは、貯留されたCO2が周辺の生態系や水資源に影響を及ぼさないことを確認し、貯留の永続性を担保するための要件である。アーバックル層は貯留容量と封じ込め能力の高さから、米国中西部における主要な貯留対象地層として注目されてきた。
本プロジェクトの炭素源がトウモロコシ由来エタノールの発酵CO2である点は、炭素除去(CDR)の観点から重要な意味を持つ。バイオマス由来CO2の回収・貯留は、原理的にはバイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)の枠組みに位置付けられ得るためである。エタノール発酵で副生されるCO2は純度が極めて高く、追加的な分離コストが小さいことから、CCSの初期商業展開先として経済性に優れる。
米国では、内国歳入法第45Q条による炭素貯留税額控除が、エタノール由来CO2の地下貯留に対して有力なインセンティブを提供している。今回のクラスVI認可は、税制優遇と規制承認の双方が揃うことで、農業・バイオ燃料産業を基盤とする中西部地域においてCCS事業のスケールアップが本格化する局面を象徴している。
EPAは近年、コロラド州など他州でもクラスVI井戸の許可手続きを進めており、永続的な炭素貯留プロジェクトの全国的な展開を支える規制基盤が整いつつある。クラスVI認可の取得は、CCSプロジェクトの最終投資決定(FID)に向けた最大級のリスク要因の一つであり、認可数の増加はボランタリーカーボンクレジット市場、特に除去系カーボンクレジット供給の中長期的な拡大シグナルとして注目される。
エタノール由来CO2のCCSは、純度の高さと既存インフラへの近接性から、米国における除去系カーボンクレジット(厳密には「BECCS由来除去」とみなせる場合)の最も現実的な短中期供給源の一つである。
なお、エタノール工場のCO2回収を「除去系」として扱うか「削減系」として扱うかは方法論依存であり、購入側企業はカーボンクレジットレーティングや方法論の精査が不可欠となる。
参考:https://www.epa.gov/newsreleases/epa-issues-class-vi-well-permit-purefield-carbon-capture-kansas