本文へスキップ
最新ニュース
海外ニュース

ルイジアナ州、CCS土地収用制限法案を否決 1,000億ドル超の投資を守る産業界が押し切る

2026.04.05 更新 2026.04.06 読了 約4分
ルイジアナ州、CCS土地収用制限法案を否決 1,000億ドル超の投資を守る産業界が押し切る
出典:Gower Brown via Unsplash

2026年3月31日、ルイジアナ州下院の天然資源エネルギー委員会(House Committee on Natural Resources and Energy)は、炭素回収・貯留(CCS)インフラ向けの土地収用権(エミネント・ドメイン)を制限する「ルイジアナ土地所有者保護法(Louisiana Landowners’ Protection Act)」、すなわち下院法案7号(HB 7)を賛成7・反対12の票差で否決した。

採決は約5時間に及ぶ公聴会の末に下され、傍聴席は土地所有者とロビイストで埋め尽くされた。

法案の骨子と背景

HB 7は、ルイジアナ州下院副議長を務めるマイク・ジョンソン(Mike Johnson)議員(共和党・ピンヴィル選出)が提出した。同議員は、CCS貯留・パイプライン向けに私有地の収用を認める2020年州法を廃止することを目的としていた。

ジョンソン議員は「この法案はCCSに反対するものではなく、大手石油会社と一般市民が対等に任意交渉できる環境を整えるためのものだ」と主張。「自ら進んで合意した場合にのみ、プロジェクトは成立すべきだ」と訴えた。

ただし法案の名称にある「マイク・ジョンソン」は、米国連邦下院議長の同名議員とは別人のルイジアナ州下院議員である点に注意が必要だ。

「世界が注目している」

産業界側は、法案が成立した場合の経済的損失を強く訴えた。

ルイジアナ・ケミカル・アソシエーション(Louisiana Chemical Association)のデビッド・クレッソン(David Cresson)会長兼CEOは、CCSに紐づく同州の産業投資額が1,000億ドル(約15兆9,600億円)超に上ると指摘し、「ルイジアナがCCSインフラの整備に後ろ向きとみなされれば、投資は他州に流れる」と警告した。

産業界代理人の弁護士キンバリー・マッツェンガ(Kimberly Mazzennga)は委員会で、「世界全体がルイジアナの対応を注視している」と述べ、CCSは新規成長だけでなく既存の産業回廊の「生き残り手段」だと強調した。

現時点でルイジアナ州にはすでに65以上のCCSプロジェクトが計画されており、全米最多の申請件数を誇る。

州法と連邦許認可の二重構造

反対派の議員マーカス・ブライアント(Marcus Bryant)議員(共和党・ニューイベリア選出)は、2020年法に基づいて投資を決定した企業に不公平な影響を与えるとしてジョンソン議員を批判した。

規制の観点からも、同州はクラスVI圧入井の許認可権限を2024年1月に米国環境保護庁(EPA)から移譲された。その後、申請が急増したことを受け、ジェフ・ランドリー(Jeff Landry)知事は2025年10月に新規クラスVI井許可申請の一時停止(モラトリアム)を発令し、現在も継続中だ。

地方自治体への権限移譲は継続審議

HB 7の否決後も、地方自治体の関与を強化する2つの関連法案が審議を続けている。

  • HB 6:ラパイズ郡(Rapides Parish)の地方当局が、CCSプロジェクトおよびCO2パイプラインを管轄内で承認・却下できる権限を付与する。
  • HB 5:同様の権限をルイジアナ州全郡に拡大する。

いずれも委員会審議の日程はまだ確定していないが、州全体にわたるCCS展開の在り方を左右しうる立法動向として注目される。

ノースダコタ州では貯留許可が無効化

ルイジアナ州の事例は米国全土の傾向の一部に過ぎない。2026年3月にはノースダコタ州でも、サミット・カーボン・ソリューションズ(Summit Carbon Solutions)のCCS貯留許可が裁判所によって無効化されたほか、同社はアイオワ州の土地所有者に対して権利取得条件の改善を2025年8月に約束した経緯がある。CCS普及に向けたインフラ整備と地域社会の同意確保のバランスは、米国内でなお解決できていない課題だ。

ルイジアナ州での否決は、CCS投資の継続に一定の安心感を与える一方、地方自治体への権限移譲を求める関連法案(HB 5・HB 6)が継続審議に入ったことは見逃せない。

日本においても、CCS事業化に向けた法制度の整備と地域合意形成は不可分の課題であり、産業脱炭素化を推進するGXおよびCCUS関連投資を検討する日本企業にとって、米国での立法動向は先行事例として注視する価値がある。

特に、土地収用問題が訴訟リスクとして事業コストに転嫁されうる点は、プロジェクト・ファイナンスの与信評価においても重要な示唆を含む。

参考:https://rbnenergy.com/daily-posts/analyst-insight/louisiana-lawmakers-reject-bill-limit-eminent-domain-ccs

関連タグ CCS
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。