ノルウェーのエンジニアリング大手・エイカー・ソリューションズ(Aker Solutions)は2026年3月19日、リトアニアのクライペダ(Klaipėda)に建設が計画されるCO2ターミナルのフロントエンド・エンジニアリング&デザイン(FEED)業務の契約を受注したと発表した。発注元は国際エネルギーターミナル事業者のKNエナジーズ(KN Energies)。
バルト海地域における初の国境越え炭素回収・貯留(CCS)バリューチェーンの構築に向けた重要なマイルストーンとなる。
本プロジェクトは、KNエナジーズが主導するCCSバルティック・コンソーシアム(CCS Baltic Consortium)の一環として推進されている。欧州委員会から「共通利益プロジェクト(Project of Common Interest)」に指定されており、EUのコネクティング・ヨーロッパ・ファシリティ(Connecting Europe Facility、CEF)エネルギープログラムから資金支援を受けている。
同コンソーシアムが目指すのは、リトアニアおよびラトビアの産業排出源から回収したCO2を集約・液化し、船舶輸送によって北海の海底地層に恒久貯留するという、地域横断型CCSバリューチェーンの確立である。産業排出国とオフショア貯留地点を結ぶこのモデルは、欧州のCCSネットワーク統合に向けた戦略的インフラとして位置づけられている。
クライペダのCO2ターミナルは、年間約280万トンのCO2を処理する能力を想定している。リトアニアとラトビアおよびバルト海広域の産業排出源からCO2を受け入れ、一時貯留したうえで北海海底の恒久貯留サイトへ出荷する設計である。
FEEDフェーズでは、エイカー・ソリューションズがこれまでの技術評価フェーズの成果を踏まえ、インフラの技術仕様を精緻化するとともに、将来的な拡張オプションを評価する。ノルウェー、インド、英国の複数拠点から100名以上のエンジニアが参画し、2026年第3四半期中に完了予定。最終投資決定(FID)は2027年を目標とし、商業運転開始は2030年を見込む。
エイカー・ソリューションズは1990年代からCCSインフラの設計・納入を手がけており、炭素回収の統合から輸送・ターミナル・ハブ施設、恒久貯留まで、CCSバリューチェーン全体にわたる経験を有する。ノルウェーのノーザン・ライツ(Northern Lights) CCSプロジェクト、ブレビク(Brevik)、オスロCCSといった先駆的プロジェクトへの参画もその実績のひとつである。
同社ニューエナジーズ担当EVPのヘンリク・イナドミ(Henrik Inadomi)氏は、「30年超のCCS経験と最先端プロジェクトから得た知見を活かし、バルト海地域および欧州全体にとって重要な旗艦プロジェクトを支援できることを誇りに思う」と述べた。
KNエナジーズのチーフ・ビジネス・デベロップメント・オフィサー、リナス・キルダ(Linas Kilda)氏は、「FEEDコントラクターの選定はCCSバルティック・コンソーシアムにとって重要なマイルストーン。KNエナジーズが持つ海洋極低温・液体ターミナル管理の実績と、エイカーの深い工学的専門性の組み合わせにより、バルト海地域に効率的かつスケーラブルなCO2ロジスティクスを提供できると確信している」と語った。
バルト海でのCCS国境越えインフラは、欧州CCSネットワークの「東方拡張」を象徴する動きであり、CO2ターミナルというロジスティクス機能が産業脱炭素の要衝になることを改めて示している。
日本においても、GX-ETSの本格稼働と並行し、CCS関連では苫小牧CCSプロジェクトや東南アジアとの二国間クレジット制度(JCM)を活用したCCS案件の展開が注目される。
製鉄・セメント・化学など排出削減困難(Hard-to-Abate)セクターを抱える日本企業にとって、CO2輸送・ターミナルインフラへの早期関与と国際CCSバリューチェーンの知見獲得は、将来の炭素回収・貯留(CCS)コストと規制対応リスクを左右する戦略的課題となるだろう。