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英国航空業界、GGR除去系カーボンクレジット購入に約4億3,000万円投資 「先行市場シグナル」でCDR市場の育成へ

2026.03.26 読了 約5分
英国航空業界、GGR除去系カーボンクレジット購入に約4億3,000万円投資 「先行市場シグナル」でCDR市場の育成へ
出典:イメージ

英国の航空業界団体サステイナブル・アビエーション(Sustainable Aviation)は2026年3月17日、ロンドン開催の「Sustainable Skies World Summit(サステイナブル・スカイズ・ワールド・サミット)」において、温室効果ガス除去(GGR: Greenhouse Gas Removals)に関する除去系カーボンクレジットの購入計画を発表した。

投資総額は200万ポンド(約4億2,600万円)超・250万ドル(約3億9,900万円)超に上り、GGR市場の初期育成を目的とした業界初の「先行市場シグナル(Advanced Market Signal)」として位置付けられる。

「先行市場シグナル」とは何か

先行市場シグナルとは、技術が商業スケールに達する前に需要側が購入意思を明示することで、供給側の投資を誘引する仕組みである。炭素除去(CDR)分野ではアドバンスト・マーケット・コミットメント(AMC)に類似した概念であり、技術初期フェーズにおける「バンカビリティ(融資適格性)」向上に寄与するとされる。

今回サステイナブル・アビエーションが発表した先行市場シグナルは、特定産業セクターが横断的に実施する取り組みとして世界初とされる。エアバス(Airbus)、ブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways)、ロンドン・ガトウィック空港(London Gatwick Airport)、ヒースロー空港(Heathrow Airport)、ロンドン・ルートン空港(London Luton Airport)、マンチェスター・エアポーツ・グループ(Manchester Airports Group)、ナッツ(NATS)が参加している。

投資規模と除去量の試算

GGRカーボンクレジットの市場価格はトンあたり100〜200ポンド(約21,300〜42,600円)と見込まれており、今回の200万ポンド(約4億2,600万円)の投資により1万〜2万トンのCO2が大気から永続的に除去される計算となる。

一方で、英国のジェット・ゼロ・タスクフォース(Jet Zero Taskforce)の試算によれば、2050年時点で英国航空セクターが必要とするGGRの規模は年間2,000〜3,000万トンに達する見通しだ。英国気候変動委員会(Climate Change Committee)も2050年時点で年間2,300万トンが必要と予測しており、今回の1万〜2万トンはその0.1%にも満たない。サステイナブル・アビエーションも「あくまで概念実証(proof-of-concept)」と位置付けており、今後の政策支援と民間資金の拡大が不可欠との認識を示している。

非CO2影響への対応、コントレイル問題

今回の発表は除去系カーボンクレジット購入にとどまらない。サステイナブル・アビエーションは同日、航空の非CO2気候影響に関するポジションペーパーも公表した。航空の気候影響はCO2排出だけでなく、コントレイル(飛行機雲)や窒素酸化物(NOx)なども総温暖化インパクトの一部を構成している。

同団体が示した対応の4つの柱は以下の通りである。

  • データの高度化
    航空機へのリアルタイム排出量・気象センサー搭載
  • 燃料の最適化
    持続可能な航空燃料(SAF)を長距離路線に優先配分
  • 飛行経路の最適化
    コントレイル回避の飛行試験と異なる飛行技術の非CO2影響評価
  • 科学者との連携
    測定・報告・検証(MRV)手法の高度化に向けた専門家協働

政策との接続、CORSIAとSAF義務化

英国航空会社は現在、英国排出量取引制度(UK-ETS)、CORSIA(国際民間航空の炭素相殺・削減制度)、SAF義務化の三つの気候政策に同時対応している。サステイナブル・アビエーションは、SAF義務化の枠組みがGGRカーボンクレジットへのインセンティブとして機能しうることを指摘しつつも、GGRカーボンクレジットのさらなる普及には政策支援による調達コスト引き下げが必要との見解を示した。

サステイナブル・アビエーションのチーフ・エグゼクティブ、ダンカン・マッコート(Duncan McCourt)氏は次のように述べた。「GGRのスケールアップは削減困難セクターにとって不可欠であり、今回の先行市場シグナルはGGRセクターの成長を促進するための業界の即時行動だ。航空の非CO2影響への対応も明確に支持する。研究・試験・協働の加速により、航空の気候影響全体を低減する実践的な解決策を提供できる」と語った。

英国航空業界によるGGRカーボンクレジットへの先行市場シグナルは、日本の航空・製造業にとっても注目すべき先例である。

日本ではCORSIA対応や国内GX-ETSの設計議論が進む中、全日本空輸(ANA)・日本航空(JAL)はSAF調達や炭素除去(CDR)購入に係るサプライチェーン構築を急務としており、今回のような業界横断型の共同購買モデルは調達コスト分散の観点から有効な参照事例となりうる。

参考:https://www.sustainableaviation.co.uk/news/uk-aviation-industry-body-outlines-plans-to-boost-greenhouse-gas-removals-market-and-tackle-non-co%E2%82%82-emissions/#:~:text=Notes%20to%20editors:,Manchester%20Airports%20Group;%20and%20NATS.

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。