株式会社サカイ引越センターと株式会社paramitaは2026年3月31日、企業の転勤・社宅異動に伴うCO2排出量をJ-クレジットでオフセットする法人向けサービス「エシカル引越 for Business」の提供を開始したと発表した。
引越1件につき1,100円(税込)を追加するだけで、Scope3排出量の実質ゼロ化と森林保全への貢献を同時に実現できる仕組みである。
多くの企業が2050年カーボンニュートラルへの道筋を描くなか、Scope3排出量の削減は喫緊の経営課題となっている。しかし、社員の転勤・引越に伴う排出量は年間を通じて継続的に発生しているにもかかわらず、対策が手薄な領域として残されてきた。
本サービスはこの課題に正面から応える。引越1件あたりの平均CO2排出量は0.056トン(サカイ引越センターが燃料法により算定したScope1排出量および年間取扱件数をもとに算出)であり、この量を森林由来のJ-クレジットによりオフセットする設計となっている。
オフセットに使用するカーボンクレジットは、国が認証するJ-クレジット制度の森林由来カーボンクレジットである。調達先は、サカイ引越センターが協定を締結している三重県尾鷲市および鹿児島県大島郡龍郷町の森林保全・生態系再生プロジェクトで、今後は日本各地の対象地域を順次拡大していく方針だ。
カーボンオフセットと同時に生物多様性保護や地方創生への直接貢献も可能となる点は、コベネフィット(Co-benefit)を重視する近年の市場要請とも合致する。
本サービスは、オフセットの証明となるオフセット証明書(無効化通知書)を発行する。これにより、企業はサステナビリティレポートや統合報告書にオフセット実績を記載することが可能となる。
また、社員が自身の転勤に際して環境貢献を実感できる設計は、従業員エンゲージメント向上の観点からも注目される。Scope3の計上・オフセット作業を企業側がまとめて代行する形式であるため、現場部門の実務負荷を最小化できる点も評価できる。
個人向けの「エシカル引越」は2025年1月に先行リリースされ、初年度だけで年間40,000件以上の申込を獲得している。この実績を基盤に法人契約特化版へ展開した形であり、スケール拡大によるJ-クレジット需要創出という観点でも市場に対して一定のインパクトをもたらす取り組みといえる。
本サービスが示す最も重要な論点は、Scope3の「見えにくいカテゴリ」への実装モデルとしての再現性である。
GHGプロトコルにおけるScope3カテゴリ6(出張)やカテゴリ7(雇用者の通勤)は算定義務の認識が広がりつつあるが、転勤・引越というイベントドリブンな排出源は依然として盲点になりがちだ。1件1,100円・J-クレジット連動という極めてシンプルな課金構造は、Scope3対応を社内インフラとして定着させる際のUXモデルとして、他業界のサービスプロバイダーにとっても参照価値が高い。
また、J-クレジットの森林由来カーボンクレジットを地域の生物多様性保全と接続する設計は、TNFD開示への対応を念頭に置く企業にとっても訴求力を持つ。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000073.000050616.html