滋賀銀行グループが自ら保有する太陽光発電所の環境価値を活用し、グループの事業拠点に再生可能エネルギー(以下、再エネ)電力を供給する”自産自消”モデルの運用を2026年4月1日より開始した。
株式会社滋賀銀行、子会社の株式会社しがぎんエナジー、大阪ガス株式会社、およびDaigasエナジー株式会社の4社が合意したものであり、Scope1・2の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロとする目標の達成に向けた中核施策として位置づけられている。
本取り組みの技術的核心はFIT特定卸供給の仕組みの活用にある。
FIT制度(再エネ固定価格買取制度)の認定を受けた発電所から生じる電力を、卸電力市場を経由せずに特定の発電所を指定して小売電気事業者へ卸供給できる制度であり、大阪ガスがその小売電気事業者としてしがぎんエナジー保有の太陽光発電所に由来する環境価値を再エネ電気と組み合わせ、滋賀銀行の本店ビルおよび電力契約容量の大きい主要支店へ供給する。販売は大阪ガスの代理店であるDaigasエナジーが再エネ電気料金メニュー「D-Green」として行う。
通常の非化石証書取引とは異なり、特定の発電所と需要地点を直接紐づけるこの手法により、環境価値の帰属先を明確に特定できる。Scope2の測定・報告・検証(MRV)において「立地ベース法」と「市場ベース法」の双方で整合性が取れる形式となり、RE100やSBT(Science Based Targets)の要件を満たす属性証書として機能する点が重要である。
しがぎんエナジーが保有する太陽光発電所の年間発電量は、滋賀銀行グループの年間使用電力量の約3倍に達している。現時点ではグループ内の自家消費分に充当するにとどまるが、将来的にはこの余剰発電量をJ-クレジット制度における再エネカーボンクレジットとして外部販売する展開も考えられる。グループ外の地域事業者への再エネ電力供給と組み合わせることで、”自産自消”から”地産地消”への拡張モデルが描かれており、4社はその実現に向けて取り組む方針を明確にしている。
滋賀銀行は2024年4月に策定した第8次中期経営計画において、2029年3月までにScope1・2の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロとする目標を掲げている。今回の再エネ供給開始はその進捗における最初の具体的なマイルストーンとなる。地域金融機関がエネルギー子会社を通じて発電資産を保有し、自社のScope2を直接削減する構造は、国内銀行セクターでは先進的な事例に位置づけられる。
Daigasグループは2030年度までに再エネ普及貢献量を500万kWに拡大する目標を掲げており、地域企業の脱炭素支援を小売電気事業者の立場から積極的に展開する姿勢を示している。
本取り組みが示す最重要の論点は、環境価値の帰属明確化という点にある。
非化石証書のスポット調達では発電所の特定が困難だが、FIT特定卸供給を用いることで再エネ属性の追跡可能性が格段に高まる。Scope2削減の信頼性を巡る国際的な議論が高まるなか、日本企業が自社のサプライチェーンや関係会社を通じて「追跡可能な環境価値」を確保するモデルは、今後のGX-ETSや再エネ調達戦略の設計において重要な参照事例となり得る。
余剰発電分のカーボンクレジット化という次のステップが実現すれば、地域金融機関によるカーボンクレジット市場への直接的な供給者参入という新たな潮流が生まれる可能性もある。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000224.000139670.html