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農水省、みどり加速化GXプランを決定 農業由来カーボンクレジットは品質が次の関門に

2026.06.29 読了 約3分
農水省、みどり加速化GXプランを決定 農業由来カーボンクレジットは品質が次の関門に
出典:イメージ

農林水産省は6月25日、第18回みどりの食料システム戦略本部で「みどり加速化GXプラン」(通称MIDORI BOOST)を決定した。2021年策定のみどりの食料システム戦略から5年を経て、2030年までに集中的に取り組む施策をまとめたものである。

GX投資の呼び込みを横断的課題に据え、農水省はカーボンクレジット関連で農業分野のJ-クレジット拡大、インセッティングの普及、JCMによる海外案件形成を投資誘引の柱に置いた。

本件は、みどり戦略とJ-クレジット制度の既存路線を加速させる第2フェーズと位置づけられる。

農業J-クレジットの拡大とScope3対応

農業分野のJ-クレジットは、複数の生産者の削減活動を束ねるプログラム型が急速に広がっている。2030年目標としていた認証量60万トンは既に達成済みで、農水省は方法論の拡大とプログラム型プロジェクトの推進を引き続き進める方針だ。

環境価値の見える化制度「みえるらべる」は、Scope3対応へと用途を広げる。農林中央金庫や食品関連企業、スタートアップなど30社が参加するインセッティングコンソーシアムは、バリューチェーン外のカーボンオフセットではなく、バリューチェーン内で削減・吸収に取り組む手法の国内普及を掲げる(2026年3月時点)。

JCMを通じた海外案件の組成

海外展開では、JCMを含む案件形成が動き出している。フェイガーは間断灌漑(AWD)やバイオ炭のJCMクレジット事業を複数国で実施し、TOWINGは高機能バイオ炭の製造とともにカーボンクレジットの発行・販売を手がける。みどり脱炭素海外展開コンソーシアムにはメガバンクやテック企業など128社が参画する(2026年5月時点)。

いずれも、農業の現場で生まれる削減・吸収を国内外のカーボンクレジット市場に接続する取組である。

農業由来クレジットの品質と永続性

ここで論点になるのが、束ねられた農業由来クレジットの質である。間断灌漑は水田からのメタン排出を抑える削減系の取組であり、大気中のCO2を固定する除去には当たらない。バイオ炭は土壌中に炭素を比較的長く留める除去系だが、土壌炭素の蓄積は管理の変更や撹乱で逆転しうる。

農水省はこれらを農業分野のJ-クレジットやJCMという同じ枠組みで扱う。削減と除去、永続性の長短が異なる取組を一括りにすれば、買い手が質を見極めにくくなる。

一方で、GX加速化研究会では、価格や永続性だけにとらわれず、農業生産性の向上や地域への経済効果といった相乗効果も踏まえて取組を評価すべきだとの意見が出ている。カーボンの数量だけで農業由来クレジットの価値を測ることへの慎重論である。

編集部の視点

今回のプランで新しいのは、J-クレジットやJCMの個別施策よりも、農業の取組を投資の受け皿として束ね、Scope3対応まで一続きで描いた構図にある。認証量目標の前倒し達成が示すとおり、組成の量は出始めている。次に問われるのは質だ。

インセッティングやScope3対応を通じて農業由来クレジットに関わる日系の食品・流通企業は、間断灌漑、バイオ炭、土壌炭素を同質のものとして扱うべきではない。削減系か除去系か、永続性をどう担保するかで、後年の評価リスクは大きく変わる。調達や開示の段階で種別ごとに質を見分ける目が、取組の継続を左右する。

参考:https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/260625.html

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。