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DP World、欧州3カ国で海上貨物向けカーボンインセッティング試験プログラム「Insetify」を開始

2026.03.13 読了 約4分
DP World、欧州3カ国で海上貨物向けカーボンインセッティング試験プログラム「Insetify」を開始
出典:<a href="https://www.dpworld.com/en/news/dp-world-launches-carbon-inset-trial-in-belgium-portugal-and-sweden" target="_blank">DP World</a>

国際物流大手のDPワールド(DP World)は、欧州における海上貨物の排出削減を目的とした新たなカーボンインセッティング試験プログラム「インセティファイ(Insetify)」を2026年4月1日より開始すると発表した。

対象地域はベルギー、ポルトガル、スウェーデンの3カ国で、海上フォワーディングを利用する荷主企業のScope3排出量削減を支援する。

四半期25TEU以上で自動的にカーボンクレジットを付与

インセティファイの仕組みは明快である。四半期あたり25TEU(20フィートコンテナ換算単位)以上を出荷する顧客に対し、1TEUあたり100kgのCO2e相当のカーボンインセッティング・カーボンクレジットが自動的に付与される。追加費用は発生しない。たとえば、四半期に50TEUを輸送した場合、5トンのCO2e相当のカーボンクレジットが発行される計算である。

カーボンオフセットとの本質的な違い

従来のカーボンオフセットが植林などサプライチェーン外のプロジェクトを通じて排出を相殺するのに対し、カーボンインセッティングはバリューチェーン内部での排出削減を意味する。今回のプログラムでは、DPワールドの子会社であるDPワールド・シッピング・ソリューションズが海上輸送において低炭素燃料を段階的に導入することで排出削減を実現し、その削減分をカーボンクレジットとして顧客に還元する。

この点は、Scope3排出量の開示圧力が高まる荷主企業にとって極めて重要である。カーボンオフセットと異なり、カーボンインセッティングは自社のサプライチェーンに直接紐づく削減実績であるため、グリーンウォッシング批判を回避しやすい。

英での先行プログラムが実績を証明

インセティファイは、DPワールドが2025年1月に英のサウサンプトン港およびロンドン・ゲートウェイ港で開始した先行プログラムの成果を踏まえたものである。英プログラムでは25万TEU以上が登録され、9,000トン超のCO2e相当のカーボンインセッティング・カーボンクレジットが発行された。この実績は、海上輸送における排出削減ソリューションに対する荷主企業の需要の高さを示している。

スカンジナビア進出とモーダルシフト戦略

今回の欧州展開は、DPワールドのスカンジナビア地域におけるフォワーディング事業拡大とも連動している。スウェーデンではストックホルムおよびヨーテボリに新オフィスを開設し、初年度で国内出荷の最大25%を鉄道・海上輸送へ転換することで道路輸送由来の排出削減を目指す。加えて、書類の100%電子化やオンライン請求への完全移行も計画されている。

ジョン・トレンチャード(John Trenchard)欧州サステナブル国際サプライチェーン担当VPは、「サプライチェーンの脱炭素化に向けて複数のソリューションを提供することがDPワールドにとって重要である。インセティファイは、長期的かつ包括的な計画の一部として、海上輸送の残余排出量に対する実務的なアプローチを可能にする」と述べた。

本プログラムには持続可能性に関するトレーニングも組み込まれており、荷主企業が自社の物流排出量をより深く理解し、削減策を特定する支援も行われる。

インセティファイは、DPワールドが掲げる2050年ネットゼロ目標に向けた低炭素物流戦略の一環として位置づけられている。

海運Scope3排出量の定量的な削減実績をカーボンクレジットとして荷主に還元するDPワールドのモデルは、日本の海運・物流業界にとって示唆に富む。

邦船大手もLNG燃料船やメタノール燃料船への転換を進めているが、その排出削減分を荷主のScope3実績に直接結びつけるカーボンインセッティングの仕組みは未成熟である。

GX-ETSフェーズ2における間接排出の取り扱いや、CBAM対応でサプライチェーン排出の可視化が求められるなか、物流事業者と荷主が連携した「バリューチェーン内削減」の枠組み構築は喫緊の課題といえる。

参考:https://www.dpworld.com/en/news/dp-world-launches-carbon-inset-trial-in-belgium-portugal-and-sweden

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。