米エネルギー省(DOE)は、ウェストバージニア州グラント郡で計画される「テラスパーク・エナジーキャンパス」の開発に対し、最大1,850万ドル(約29億6,000万円)の連邦資金を交付すると発表した。資金はFEED(基本設計)、許認可、初期技術検討に充当される。設備は1.6GWの新設石炭火力に次世代炭素回収技術を統合したもので、既存のマウントストーム(Mt. Storm)エネルギー施設に隣接する新規立地に建設される。事業主体はテラスパーク(TerraSpark)。
本件は排出源対策としてのCCS投資であり、大気からの炭素除去(CDR)系カーボンクレジット市場とは独立した文脈で評価する必要がある。原文では45Q等の税額控除やカーボンクレジット発行への言及はない。
捕集技術はマンテル(Mantel Capture)のモルテンボレート方式を採用する。同社によれば、施設からのCO2を最大98%捕集し、捕集に要するエネルギーを既存技術比97%超削減することで、トン当たり捕集コストを現行最先端技術の半分未満に抑えられるという。
ボイラーはバブコック・アンド・ウィルコックス(Babcock & Wilcox)が400MWの超臨界ボイラー4基と排出制御設備一式を設計・供給し、建設も担う。設計支援をサージェント・アンド・ランディ(Sargent & Lundy)、CO2の輸送・貯留・利用計画をアドバンスト・リソーシズ・インターナショナル(Advanced Resources International)が担当する。
ただし、これらの捕集性能・コスト数値はベンダーの公称値であり、事業自体はFEED段階にとどまる。貯留と利用の具体的な規模・地点も計画段階にあり、商業規模での実証は今後の課題となる。
本件は、現政権が掲げる「エネルギードミナンス」の下で進む石炭インフラ近代化の流れに位置づけられる。フルビルドアウト時に常設約500人、建設で数百人規模の雇用を見込み、ウェストバージニア大学が運営する希土類抽出・先端材料の研修拠点も併設する。ライリー・ムーア下院議員(Riley Moore、WV-02)は、地元への雇用回帰と石炭産業重視の政策方針を歓迎するコメントを出した。
一方で、新規石炭施設への連邦補助金に対しては、納税者団体から財政的リスクが高く逆効果だとの批判も出ている。
本件の意義は、捕集コストの低減を狙う次世代技術の前進と、米国の石炭回帰という政策潮流の交点にある。構造的な転換点というより、既存トレンドの延長線上で技術検証が進む事例と位置づけられる。
マンテルが主張する捕集コストの半減と大幅な省エネは、実証されれば石炭・産業排出源のCCS経済性を大きく変えうる。ただしFEED段階の公称値であり、商業規模での再現性が確認されるまでは評価を留保すべき水準にある。
政策面では、連邦補助金が気候政策ではなくエネルギー安全保障・産業政策の論理で配分されている点が特徴である。新設石炭という選択が数十年単位の化石燃料インフラを固定する以上、捕集技術の実効性と貯留の確実性が、本件の気候整合性に対する評価を左右する。