米バイオ燃料大手ポエット・バイオリファイニング(POET Biorefining)は2026年3月初旬、インディアナ州ワバッシュ郡(Wabash County)を相手取り、炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトに対する無期限モラトリアム(一時停止措置)の撤回を求める連邦訴訟を提起した。訴訟はインディアナ州北部地区連邦地方裁判所に係属している。
ポエットは、ワバッシュ郡ノースマンチェスター(North Manchester)で操業するエタノール製造施設において、製造工程で排出されるCO2を回収し、地下の適切な地層に永久貯留するCCSプロジェクトを計画していた。
しかし、ワバッシュ郡委員会が2025年6月にCCS開発に対する無期限モラトリアムを導入したことで、同計画は事実上凍結された。ポエットは、この措置により多大な経済的損失が生じていると主張している。
ポエットの訴状は、郡のモラトリアムが以下の3点において違法であると主張する。
本訴訟の背景には、CCSの安全性をめぐる地域住民と産業界の深い溝がある。住民側は、地下へのCO2貯留に伴うパイプライン破裂やガス漏洩のリスクを懸念し、健康被害への不安を表明してきた。
これに対しポエットは、同プロジェクトではパイプライン輸送を行わず、エタノール製造施設の敷地内でCO2を直接回収・圧入する方式を採用する計画であると反論している。ワバッシュ郡委員会は、住民の懸念を踏まえてモラトリアムを導入した経緯を説明しつつ、訴状の内容を精査中であるとのみコメントしている。
近年、米連邦政府および各州政府はCCSの導入促進に向けた政策枠組みの整備、規制上の認可、そして財政的インセンティブ(連邦税額控除45Qを含む)を積極的に推進してきた。ポエットは、郡のモラトリアムが同社のプロジェクトを阻害するだけでなく、こうした広範な政策努力そのものを損なうと主張している。
本件の判決は、インディアナ州内のみならず全米において、地方自治体がCCS技術をどの程度規制しうるかという重要な法的先例となることが見込まれる。
本件は、CCS推進を掲げる国家政策と、安全懸念を持つ地域コミュニティとの衝突という、日本でも今後直面しうる構図を鮮明に描き出している。
日本でも、CCSを含む炭素管理技術への産業界の関心が急速に高まっているが、CO2地下貯留候補地の選定においては地元住民の合意形成が不可避の課題である。
参考:https://www.wane.com/wp-content/uploads/sites/21/2026/03/POET-complaint.pdf