ゴールドスタンダード(Gold Standard)は2026年5月13日、自社レジストリの基盤刷新を発表した。技術パートナーは気候テックのトロビオ(Trovio)であり、同社のプラットフォーム「CorTenX」を採用する。稼働は2026年第4四半期、既存口座とカーボンクレジット保有残高は無停止で移行される。
トロビオは2026年1月、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)からパリ協定6条2項および6条4項の中央レジストリ構築を多年契約として受託している。標準機関最大手の一角が同じ基盤を採用することで、ボランタリーカーボンクレジット市場と6条インフラの技術的同型化が射程に入る。
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新基盤はAPIファースト設計を中核に据える。発行・移転・無効化といった核心機能を標準化されたAPI経由で外部システムから直接呼び出せる構造とし、各国レジストリ、取引所、マーケットプレイスとの直接接続を可能にする。
基盤は暗号学的に検証可能なインフラを持ち、改ざん耐性のある監査証跡、完全な所有権連鎖の追跡、安全な取引管理を提供する設計とされる。マーガレット・キム(Margaret Kim)ゴールドスタンダードCEOは、市場の進化に対応するため、相互運用性、拡張性、透明性を満たしながら市場が依存する完全性と信頼性を維持する設計であると述べた。
認証ルール自体に変更はなく、利用者は既存のプロセスを継続できる。プロジェクト開発者はプロジェクトデータの可視性向上を、買い手とカーボンクレジット保有者は情報開示・規制対応に資する透明性と報告機能の強化を、トレーダーは取引所や決済システムとの円滑な接続を享受できる見込みである。
トロビオはこれまで、オーストラリア政府向けの環境市場インフラ構築を担ってきた。豪州クリーンエネルギー規制機関のUnit and Certificate Registryは2025年11月に稼働し、ACCU約1億7,800万単位の移行を完了している。同レジストリもCorTenXを基盤としている。
2026年1月にはUNFCCCから、パリ協定6条2項(協力的アプローチ)および6条4項クレジット制度(PACM)のレジストリ基盤構築を受託した。発行・移転・取消・追跡を担う中央レジストリと、各国・国際システム間のデータ交換を担う相互運用性ハブを同時に構築する設計である。
今回のゴールドスタンダードによるCorTenX採用は、コンプライアンス市場、国際協力メカニズム、ボランタリー市場最大手の一角を同一基盤で連結する分水嶺を意味する。標準機関の差別化軸はこれまで方法論や認証厳格性に置かれてきたが、レジストリインフラ層の戦略的重要性が前面に出てきた。
APIファースト設計と暗号学的検証性は、6条移転に求められる相当調整の追跡やホスト国による主権的記録の保持と技術的に親和性が高い。標準機関のレジストリと国家レジストリ、そしてUNFCCCの中央レジストリが共通プロトコル上で接続される構造は、ボランタリーカーボンクレジットを6条クレジットへ転換するメカニズムや、コンプライアンス市場における相互認証の前提条件を整える。
トロビオが2026年5月までに獲得したインフラ層は、豪州コンプライアンス市場、UNFCCCの6条インフラ、ゴールドスタンダードの三層に及ぶ。標準機関がインフラ事業者を媒介として技術的に統合される構図は、ボランタリーカーボンクレジット市場の競争軸を方法論・認証厳格性からインフラ層へと拡張する転換を示す。
もっとも、インフラ層の整備が市場の信頼性低下を直接解消するわけではなく、永続性、MRV厳格性、追加性、ホスト国の二重計上回避といった本質的論点は別レイヤーで決着を要するという議論があり、レジストリ刷新と市場品質の関係は引き続き論点として残る。