米NGOのCarbon180は2026年6月17日、技術由来CDRの規模拡大に向けた連邦政策の提言書「Scaling Technology-based CDR: A US Federal Policy Roadmap」を公表した。全CDR経路を合わせて2030年までに年間3,000万トンのCO2除去を実現する中間目標を掲げ、その達成に向けた短期的かつ実行可能な政策措置を整理している。
対象とするのは、直接空気回収(DAC)、生物起源炭素除去・貯留(BiCRS)、鉱物化促進、海洋系CDRなど、CO2を数世紀から数千年にわたり固定する永続的な技術経路である。
提言の根幹には、CDRを「公共財」と捉える認識がある。同団体で技術・土地政策を統括するダフネ・イン(Daphne Yin)は、公共財であるCDRは意図的な連邦の関与なしには構造的に資金不足に陥ると述べ、断片化した市場を2050年までに数ギガトン規模の成熟産業へ育てるには連邦の資金と法制が不可欠だとする。
需要創出を政府に委ねる設計には、民間の自主的な購入こそが市場を牽引すべきだとの異論もある。
ロードマップは、技術由来CDRを責任ある形で規模化するために並行して整備すべき4つの実現条件を挙げ、それぞれに即効性のある優先提言を示した。
研究開発・実証・展開(RDD&D)では、インフラ投資雇用法を改正し、地域DACハブ事業の年間回収要件を100万トンから10万トンへ引き下げ、対象を他の永続的CDR技術へ広げ、代替的な資金メカニズムを認めるよう求めた。インフラ面では、地中貯留に必要なClass VI井戸の許可発給を効率化するため、米環境保護庁(EPA)の予算と人員の増強を提言している。
永続的市場の領域では、高品質なCDRの評価基準を備えた連邦調達制度を法制化し、連邦政府自身を主要な初期需要家とすることで民間需要を呼び込む構図を描く。標準とMMRVについては、プロトコルの科学的基盤を高めるR&D投資、経路間比較の実現、地域社会・科学者・政策立案者を交えた包摂的な連邦諮問プロセスの設置を挙げた。
米国内には200社を超えるCDR企業が存在するが、継続的な連邦投資なしには現行の政策環境が産業の本格的な規模拡大を支えきれない、というのが同団体の認識である。公的資金、需要、検証可能な標準、地域社会の信頼という複数のギャップが、依然として埋まっていないと指摘する。
本件は、米国における技術由来CDR政策の論点を体系的に整理した提言の一つとして位置づけられる。
提言の核心は、CDRを公共財と定義し、連邦調達を通じて初期需要を創出するという需要側の設計にある。供給技術の列挙にとどまらず、市場の最大の欠落である需要をどう埋めるかに踏み込んだ点に、整理としての価値がある。
ただし、提言の実装可能性は現在の連邦政治の環境に大きく左右される。法改正、予算増額、調達制度の法制化はいずれも議会と行政の継続的な関与を前提とし、政権の気候政策スタンス次第では宙づりになりうる。200社超の事業者を擁する米国がCDRの主導権を保てるかは、技術の成熟度よりも政策の持続性が鍵となる。