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【GX ETS始動連載】2026年度版、GX-ETS初年度の特例スケジュールと「今すぐやるべきこと」

2026.04.07 読了 約5分
【GX ETS始動連載】2026年度版、GX-ETS初年度の特例スケジュールと「今すぐやるべきこと」
出典:イメージ

通常ルールは2027年度から、初年度だけの別ルールを知らないと手遅れになる

GX-ETSの制度設計を理解した事業者が次に直面するのが、「では実際に何を、いつまでに、どのような順序でやればよいのか」という実務的な問いである。

しかし、ここに落とし穴がある。公式マニュアルに記載されている「標準的なスケジュール」は2027年度以降に適用されるものであり、制度初年度である2026年度には特例的な措置が複数設けられている。標準スケジュールをそのまま読んで動くと、期限や必要対応事項の認識が実態とずれてしまう。

本コラムでは、2026年度に制度対象となる事業者が取るべき行動を、時系列で正確に整理する。

通常スケジュールとの構造的違い

まず、2027年度以降に適用される通常のスケジュールを概観しておく。

通常ルールでは、制度対象年度の9月30日までに「年度平均排出量および排出目標量等合計量」を届け出るとともに、移行計画を提出する。政府(経済産業大臣)はその翌月末(11月末)に排出枠を割り当て、翌年度の9月30日までに排出実績量を報告、翌々年の1月31日に排出枠の保有義務を履行(償却)するというサイクルだ。

2026年度はこの流れに3つの特例が設けられている。

特例①:2026年度届出時に「排出目標量等合計量」の届出は不要
通常は9月30日の届出時に排出目標量等も届け出るが、2026年度においては年度平均排出量(制度対象の判定に使う数値)の届出のみでよい。排出目標量等合計量の届出は2027年9月30日まで猶予される。

特例②:排出目標量等合計量の届出は2027年9月30日
2026年度制度対象事業者の排出枠割当に必要な排出目標量等合計量は、2027年度の届出サイクルに合わせて提出することになる。

特例③:排出枠の割当は2027年11月末
2026年度の排出実績量に対する排出枠割当は、通常のスケジュールより1年遅れ、2027年11月末に行われる。

この3つの特例により、2026年度に初めて制度対象となった事業者が2026年度内に完了すべき対応事項は、実質4点に絞られる。

2026年度に完了すべき4つの対応事項

対応① 年度平均排出量の算定と制度対象の判定(全事業者)

制度対象か否かにかかわらず、すべての事業者が自ら判定を実施しなければならない。2026年度の判定に必要なデータは2023年度・2024年度・2025年度の3年間の実績であり、この期間はすでに確定している。算定にはERMS(エミッション・リポーティング・アンド・マネジメント・システム)の演算機能を活用できるが、アカウント開設(後述)が前提となる。

対応② 排出実績量の算定開始(制度対象事業者)

制度対象となる事業者は、2026年4月1日から当該年度のCO2直接排出量の実績算定を開始しなければならない。制度が始動した瞬間から計測義務が生じているため、今この記事を読んでいる時点でまだ着手していない場合、速やかに体制を整える必要がある。

なお、排出実績量は翌年度(2027年度)の9月30日までに登録確認機関による確認を経た上で報告する義務がある。2026年度中の排出実績量の確認については登録確認機関の選定・契約が前提となるため、できる限り早期に取り組むことが公式マニュアルにも推奨されている。

対応③ 届出(2026年9月30日まで)

制度対象となる事業者は、2026年9月30日までに年度平均排出量等をERMS上で届け出なければならない。この届出の受理をもって、当該事業者はGX推進法上の「脱炭素成長型投資事業者」となる。

2026年度の届出において、登録確認機関による確認は不要である。

対応④ 移行計画の提出(2026年9月30日まで)

同じく9月30日までに、2030年度までの排出削減目標や投資計画等を記載した移行計画を提出しなければならない。移行計画の記載事項は、「前年度のCO2排出量(直接・間接・合計)」「2030年度までの排出削減目標」「設備投資計画の内容と効果」「研究開発投資の内容」「その他(カーボンニュートラル実現に向けた戦略等)」の5項目だ。このうち2030年度削減目標を含む一部の事項は、経済産業大臣および事業所管大臣によって個社ごとに公表される。

ERMSアカウント開設を急ぐべき理由

上記の対応事項はすべてERMSを通じて実施するが、アカウント開設が可能になるのは2026年6月1日以降だ。アカウント開設には、デジタル庁が運営するGビズIDのアカウント(プライム又はメンバー種別)が前提として必要になる。GビズIDを未取得の事業者は、まずその取得から着手しなければならない。

9月30日の届出期限から逆算すると、6月以降の早期にアカウントを開設し、ERMSの操作を習熟した上で算定・届出作業に入ることが現実的な進め方だ。

2年度分の義務が並走する現実

もう一点、見落としがちなリスクがある。2026年度に制度対象となった事業者が2027年度も引き続き対象となる場合、2027年9月30日には以下の事項が同時並行で発生する。

  • 2026年度制度対象分の排出目標量等合計量の届出(特例②)
  • 2026年度排出実績量の報告
  • 2027年度制度対象分の年度平均排出量の届出および移行計画の提出

2027年9月30日は実質的に2年度分の義務履行期限が重なる繁忙日となる。公式マニュアルも「計画的に作業を進めることを推奨する」と明記している。2026年度の対応を着実に積み上げておくことが、翌年度の混乱を防ぐ最善策だ。

次回コラムでは、排出枠がどのような基準で割り当てられるのかを定めるベンチマーク方式の仕組みと実務上の要点を解説する。

参考:https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ets.html

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。