中国が「カーボンニュートラル工場」建設の指導意見を公表 2030年までに主要産業へ拡大

村山 大翔

村山 大翔

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中国の工業・情報化部(MIIT)を含む5省庁は2026年1月、製造業の脱炭素化とグリーン転換を加速させるための「ゼロカーボン工場建設に関する指導意見」を連名で発表した。

本指針は、2030年までのカーボンピークアウト達成に向けた「新質生産力」の育成を掲げ、工場の直接・間接排出を最小化した上で、削減困難な残余排出分を越境カーボンクレジットなどでオフセットする包括的な枠組みを提示している。

段階的な産業拡大と2030年までのロードマップ

中国政府は、脱炭素の需要が切実かつ電力消費が主体の業界から優先的に「零炭素工場」の先行モデルを選定する方針だ。

カーボンクレジットとCCUSを活用した「残余排出」への対応

今回の指導意見で注目されるのは、技術的に「削減しきれない」排出に対する最終手段として、カーボンクレジットの活用を明記した点である。

工場は自主的な削減を最大限実施した上で、残る二酸化炭素(CO2)排出について越境カーボンクレジット取引等を用いてオフセットを行い、工場全体での「実質ゼロ」を維持することが認められる。また、再生可能エネルギーの利用比率を高めるため、グリーン電力証書(GEC)取引の活用も強く推奨されている。

技術面では、生産プロセスの最適化に加え、二酸化炭素の回収・有効利用・貯留(CCUS)などの先端技術の研究開発と社会実装を推進し、源流からの脱炭素化を狙う。

サプライチェーン全体

「ゼロカーボン工場」の認定には、単体工場の削減だけでなく、サプライチェーン全体での協調が求められる。

  1. 炭素足跡(カーボンフットプリント)分析
    重点製品のライフサイクル全体における排出量を算定し、上流・下流を含めた削減策を講じる。
  2. デジタル管理センターの構築
    産業用インターネットやビッグデータ、ブロックチェーンを活用し、エネルギー消費と炭素排出量をリアルタイムで可視化・追跡できる体制を整備する。
  3. 情報開示の義務化
    ESG報告書やサステナビリティ報告書を通じて、炭素排出データやオフセットの状況を透明性高く公開することを促す。

国際貿易ルールへの「適応」と「対抗」

今回の指導意見には、欧州の炭素国境調整措置(CBAM)などの国際的な貿易ルールに対し、自国の産業競争力を守るための戦略的意図が鮮明に表れている。特に「越境カーボンクレジット」の活用を明文化したことは、中国国内のプロジェクトから創出されたクレジット、あるいは国際的な基準に基づくクレジットを工場の「ゼロ」認定に組み込むための布石と言える。

今後、日本のサプライヤーにとっても、中国国内の工場がこの基準に準拠し始めることで、同様のデータ開示や「零炭素」への同調を求められる圧力が強まることは避けられない。

単なる省エネだけでなく、クレジット調達を含めた「カーボンポートフォリオ」の管理が、中国市場での生存戦略に直結する時代が到来している。

参考:https://www.miit.gov.cn/zwgk/zcwj/wjfb/tz/art/2026/art_47be4bdb2d93437f94662dab59fbd736.html