ケニア北部トゥルカナ郡で展開するバイオ炭プロジェクトが、初回となる144トンCO2eの除去系カーボンクレジットを発行・検証・売却した。難民が主導するカーボンプロジェクトとしては世界初とされる。
プロジェクトは、ナラ・クライメート(NARA Climate)、クリオウ・エナジー(Criou Energy)、プランブー(Planboo)による共同事業である。発行された炭素はC-Sinksとして、カーボン・スタンダーズ・インターナショナル(Carbon Standards International、CSI)のレジストリに登録され、初回バッチはすでに売却を完了している。
原料となるのは、地域の放牧地や農地を侵食する侵入種Prosopis julifloraである。この低木を伐採して熱分解によりバイオ炭へ加工し、安定的な炭素として土壌中に固定する。
伐採で開放された土地は農地として再生され、モリンガなどの作物が再植される。
生成されたバイオ炭は、塩類集積土壌のpH調整と保水性改善にも寄与する。これにより土壌の養分保持力が高まり、乾燥地帯での作物栽培条件が改善する。
炭素除去量の追跡には、プランブーが開発したデジタルMRV(dMRV)技術が用いられる。バイオマスの収穫から圃場へのバイオ炭散布まで、各工程のデータをデジタルで捕捉し、CSIレジストリ上での認証を担保する。
本件は炭素除去にとどまらず、脆弱地域における経済基盤としての性格を併せ持つ。
プロジェクトはカクマとケリオの両コミュニティで、5つの協同組合にまたがる約123の雇用を支える。労働力の約50%を女性と難民が占め、協同組合は難民主導で運営される。
協同組合が栽培した作物は、カクマ難民キャンプと周辺市場へ直接供給され、地域の食料不足の緩和に寄与している。
本件は、バイオ炭CDRの既存系統に連なる一事例として位置づけるのが妥当である。
バイオ炭の固定期間は数百年級とされ、数十年規模の生物的吸収と、地中貯留型の超長期固定の中間に位置する。原料は自然由来でありながら、熱分解という技術プロセスを経る点で、自然由来と技術由来の双方の性格を併せ持つ。除去系カーボンクレジットの評価において、この中間的な永続性をどの基準で格付けするかは、依然として論点となる。