デンマークエネルギー庁(Energistyrelsen)は2026年6月9日、同国最大の単一CO2排出源であるセメント大手オールボー・ポートランド(Aalborg Portland)と、年間125万トンのCO2を回収・輸送・貯留する契約を締結したと発表した。補助総額は最大164億デンマーククローネ(約4,050億円)に上り、同国のCCSプール入札としては過去最大規模となる。
同社は遅くとも2030年までに回収・貯留を開始する。本件はデンマークが進めるCCS補助プールの目標である年230万トンの半分超を一社で担う案件であり、欧州の重工業脱炭素における大型の商業契約に位置づけられる。
契約によると、オールボー・ポートランドは貯留したCO2 1トンあたり874.75デンマーククローネ(2026年価格、約2万1,600円)の補助を15年間にわたって受け取る。年間の補助額は約11億デンマーククローネ(約270億円)、15年間の総額は最大164億デンマーククローネ(約4,050億円)となる。
同社はデンマーク最大のCO2排出企業であり、セメント製造では石灰石を焼成する化学反応の過程でCO2が不可避的に発生する。
CCSプールの入札は2024年10月に開始された。当初16件のプロジェクトが予備選考に応募し、2025年5月に10件が通過、うち8件が一次入札を提出した。2026年2月の最終入札時点で残った応札は2件のみであった。
段階的な選抜を経て応札が大きく絞り込まれた事実は、補助水準とCCS事業のリスク負担をめぐる事業者の慎重姿勢を示している。
本件は、回収から輸送、地中貯留までを一貫して担うフルチェーン型のCCSである。回収技術はエア・リキード(Air Liquide)が供給し、輸送インフラと陸域の地中貯留はハーバー・エナジー(Harbour Energy)が建設・運営する。一気通貫の体制を国家補助で支える構造であり、欧州でも先行的な事例となる。
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本件はCCS(排出回避)への補助であり、除去系カーボンクレジット市場とは独立した文脈で評価する必要がある。論点は、トンあたり約2万1,600円という補助単価の水準と、15年間で総額4,050億円に及ぶ財政負担の妥当性にある。
国際エネルギー機関(IEA)は重工業の脱炭素にCCSが不可欠と位置づける一方、高い導入コストと化石燃料依存の延命を懸念する指摘もある。
本件は、回収から地中貯留までを一貫して担う、欧州でも先行的な商業CCS契約に位置づけられる。
トンあたり約2万1,600円の補助を15年間供与する枠組みは、削減困難なセメントセクターのCCS事業性を国家財政が長期にわたって担保する設計であり、プール方式の段階的入札は補助水準とCO2貯留単価の価格発見機能を伴う。
ただし、事業性が15年間の公的資金に依存する構造は、欧州のCCSがなお補助主導の段階にあることを示しており、画期性よりも国家支援モデルの確立という連続性の側面が大きい。
最終入札が2件に絞り込まれた事実は補助単価と事業リスクの均衡の難しさを映しており、今後の重工業CCS入札の設計は、この均衡点をどこに置くかに左右される。